ふたつのシルエットの映画専門家レビュー一覧

ふたつのシルエット

Jan and Naomiの楽曲『dab ♭』から生まれたラブストーリー。恋人だった慧也と佳苗は、7年ぶりに再会する。慧也は結婚して妻と娘がおり、佳苗は今の恋人に結婚を申し込まれていた。しかし思わぬ再会で、ふたりに戸惑いと躊躇いが生まれる。監督は、「蜃気楼の舟」の竹馬靖具。出演は、「きみの鳥はうたえる」の足立智充、舞台『リチャード二世』の佐藤蛍。
  • 映画評論家

    北川れい子

    1にjan and naomiの楽曲、2も同じ、3、4がなくて、5が佐藤蛍。いや、これは言いすぎか。演出も達者である。思い出の海岸で偶然再会した元恋人どうしの男と女。忘れられない過去か。忘れたい過去か。その記憶と時間のズレを、別れたときに相手が着ていた衣服で視覚化する辺りは巧みだし、相手の不誠実さを互いになじりあうシーンの背後の柳の揺れ。それでも別れるべくして別れた2人の再会メロドラマとしてはスケッチの域を出ず、楽曲の余韻の方が断然、強い。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「ソワレ」には印象的な「シルエット」のシーンが出てくるが、この映画は徹頭徹尾ふたつのシルエットの交錯と反発のなかでなにかを描き出そうとしている。それがなにか、画面を見るかぎりではわからない。わからないが、ただ二人で時間を共有することがかけがえのないいとなみに感じられる。それだけを静かに見つめる竹馬靖具監督の視線には一切の虚飾がない。こういう瞬間、たしかにあったな、と思った。音楽が重要なファクターとなるが、ラストは無音。なかなか唸らせる。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    jan and naomi の曲の長いPVだとすると、持ち込まれた芝居が内容的にも演技の質としても硬直していて、音楽のじゃまをしているだけということになりそうだ。三十七分の尺だが、言い切っているものがない。竹馬監督も、演じる佐藤蛍と足立智充も、いろいろと計算違いがあると思う。たとえば過去と現在を衣装の変化で見せようとしているが、その衣装が記号でしかなく、ちゃんと着ている服になっていない。そもそも、こんな焼けぼっくいに火をつけてどうなるんだというつまらない話。

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