9人の翻訳家 囚われたベストセラーの映画専門家レビュー一覧

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

映画「インフェルノ」の原作小説出版時の実話を元にしたミステリー。人気小説『デダリュス』完結編の世界同時出版のため、9カ国の翻訳家が密室に集められる。翻訳作業は外部との接触を断って行われていたが、小説をネットに公開するという脅迫メールが届く。監督は、「タイピスト!」のレジス・ロワンサル。出演は、「神々と男たち」のランベール・ウィルソン、「007/慰めの報酬」のオルガ・キュリレンコ、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のアレックス・ロウザー。
  • 映画評論家

    小野寺系

    基になったのがダン・ブラウン著作の翻訳作業エピソードだったというところに、たわいなさを感じるのはともかくとして、現代的な意匠を凝らしながら、映画では難しいと思われる、ミスリードの繰り返しで観客を驚かせていく構成に挑戦した試みは応援したい。ただ絶えず変転していく物語に対して、興味を持続させるほどの強靱さが根っこにあったかについては疑問も。コマーシャリズムを悪として描くのなら、セットとして大衆側の問題も暗示する覚悟が必要だったと思う。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    終わってみれば“なんだ、そういうことだったの”と、ちょっぴり拍子抜け感も。とはいえラストに至るまでを密室の会話劇として見れば、集められた9カ国の翻訳家のキャラが面白い。小説のヒロインと同じコスチュームでないと仕事ができないロシア語担当。かと思えば給料の支払いがままならないと言うギリシャ語担当は、危機的な状況にあった国の経済政策への批判もちくり。等々、会話はかなり意味深。元ネタがあの『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ4作目出版の際の実話だったとは!?

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    閉鎖された空間の中で事件が起こり「この中に犯人がいる!」ってパターンのミステリの王道中の王道をやっているわけだが、集められた人間が各国の有能だが曲者ぞろいの翻訳家たちであり、起こる事件も「ベストセラー小説の流出」というのは、かなり捻りがあって面白いし、真相から逆算して考えると少々無理のあるお話も、構成的なギミックや、現実から巧妙にずらされた独特の空気感により、ある種パラレルワールドで起こっている物語として楽しめるよう計算されている演出もお見事。

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