TENET テネットの映画専門家レビュー一覧

TENET テネット

「ダンケルク」のクリストファー・ノーラン監督によるSFスリラー。ある男に、現在から未来に進むという時間のルールから脱出するミッションが課せられる。時間に隠された秘密を解き明かし、第三次世界大戦を止めるミッションのキーワードは『TENET』だった。突如一大任務に巻き込まれた男を「ブラック・クランズマン」のジョン・デヴィッド・ワシントンが、相棒を「ハイ・ライフ」のロバート・パティンソンが演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    コロナ禍におけるブロックバスター作品劇場公開の先陣を切ったことで映画界の救世主となったノーランだが、そもそもの企画からして、実現したこと自体が奇跡のような作品。批評よりも解説が求められ、ネットで様々な設定の検証がおこなわれるこの時代において、1回観ただけではほとんどわからない(2回観たら結構わかるが)、劇伴と効果音で重要な台詞さえ聞き取れない作品を、この規模で作る蛮勇。登場車種に見られる趣味性の欠如は、スパイアクションの作り手としては弱点だが。

  • ライター

    石村加奈

    ノーラン監督に誘われた“非日常的な旅”。シーン(場)やモーメント(瞬)がまさしく旅するように軽やかに描かれる。時空を超えるノーラン・マジック(洗練を極めた!)を堪能するうち、世界はとても大きいと気づかされる。主人公/名もなき男の胸の内は語られないが、彼の行動(例えばキャットとの成り行き)は腑に落ちる。名前も知らぬ他者の記憶や経験を生きる新たな視座を享受し、人間って面白いという感慨も。現実を忘れ、映画の世界を“体験”できるよろこびに満たされる。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    大筋はМ:Iシリーズ×「ラ・ジュテ」(!?)だが、時間の逆行という「メメント」の手法を物語自体で構築した、ゴダールが観たら嫉妬しそうな壮大な実験作。エンドロール前に〈TENET〉というタイトルが出て、ようやく散らばったピースが繋がった(気がした)が、散々革新的な映像体験をさせられた後、というのが憎い。辻褄合わせでもう一回観たいと思わせるのではなく、二回以上観ることを“前提”で作ってしまったノーラン、個人的には「ダークナイト」以来の会心作。

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