夢の裏側の映画専門家レビュー一覧

夢の裏側

    厳しい検閲など、多くの困難に見舞われ、完成までに数年を要したロウ・イエ監督の「シャドウプレイ」製作の舞台裏を準備期間から公開に至るまで記録したドキュメンタリー。監督はロウ・イエの妻であり共同脚本家でもあるマー・インリー。
    • 米文学・文化研究

      冨塚亮平

      素材が提供されなかったため本篇との関わりについては言及できないが、通常メイキングであれば削ってしまうようなスタッフとの軋轢や議論、さらには撮影終了後の当局からの検閲との闘いといった要素が生々しく記録されており、中国の映画制作の現状に関する資料としても非常に興味深い。国内での上映を諦めるか体制に迎合するかの二択しか許されないように見える中国映画界にあって、タフな交渉を厭わず作家性を押し出した作品を国内で公開し続けようとする試みの貴重さが伝わる。

    • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

      降矢聡

      ロウ・イエ監督の映画作りを通して見えてくる、中国での映画作りの困難さや表現の自由に対する検閲との闘いの記録。しかしその過酷さをきちんと捉えられているかは少々疑問。なにより検閲について、ロウ・イエ監督自身「最も手ごわい仕事」と評しているにもかかわらず、本作は検閲との闘いを数シーン描いただけで終わりする。検閲との闘いは文面のやりとりばかりで画にならないから省略されたのか。もしそうだとすればその態度はロウ・イエ監督の映画からとても遠いものだろう。

    • 文筆業

      八幡橙

      闘う映画人、ロウ・イエが自作を世に送るまでの長い長い道のりを、共同脚本家でもある妻が程よい距離から見つめる。洗村でのロケの難航、小道具の手違い、俳優の負傷、弁当足りなくなっちゃった問題など、トラブルの大波小波が打ち寄せる様は、時におかしく、時に痛切。さらに、その先に待ち受ける厳しすぎる検閲の壁――。ロウ・イエの頑ななまでの熱と執着、究極的な愛と使命がなければ、これまでの作品は存在しなかった。喜怒哀楽が色濃く渦巻く映画作りは、まさに人生の縮図だ。

    1 - 3件表示/全3件

    今日は映画何の日?

    注目記事