街の上での映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
監督は恋愛映画の名手として評価されてきたが、本作を観て、“恋愛にまつわる感情”を通して“時間”を描く、〈ビフォア三部作〉のリチャード・リンクレイター監督に並ぶ存在だと認識した。再開発で激変する下北沢を舞台に、元カノへの未練をポケットに忍ばせて日常を送る主人公を描くことで、時の流れの中で変わりゆく街と、時が流れても変われない主人公がコントラストを生み出している。主人公の心の時計の再始動を示唆するケーキの扱い方も鮮やか。甘い余韻を残す。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
主人公には目的がなければならない。目的があるから行動し、それを阻むものが出てきて、ドラマが生まれる。そんなシナリオ作りの基礎、外してますよねえ。街の住人たちは、何か明確な目的を持って生きているようには見えない。みんな小さな葛藤を抱えているが、青筋を立てるようなことでもない。欲望とか野望とは無縁に生きている人間たちが、「置かれた場所」に綺麗に咲いている。日本人は本来こんな風に生きてきたのではないだろうか。この映画が好きだ。
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映画評論家
吉田広明
今年だけでも既に何本目かという監督だが、それだけ乗っているということだろう。こういう勢いがある監督は今どき貴重なので評価したい。下北沢を舞台にした群像劇、キャストがほぼ新人で、いかにも下北にいそうな感じでリアル。人物造形、その出し入れがさすがに上手いので、世界の中にいつの間にか入りこまされ、笑わされている。映画としての完成度自体は「his」や「mellow」よりも良いように思う。ただ、どうしても「小器用」という言葉が浮かんでしまう作品ではある。
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