アボカドの固さの映画専門家レビュー一覧

アボカドの固さ

「さようなら、ごくろうさん」がPFFアワード2017に入選した新鋭・城真也の長編初監督作。俳優の前原瑞樹は突然、5年付き合った恋人の緑から別れを告げられる。ヨリを戻したい一心の前原は、周囲のアドバイスに従い、1ヶ月後の誕生日まで待つが……。主演は平田オリザ主宰の劇団・青年団所属でドラマ『伝説のお母さん』にも出演する前原瑞樹。
  • フリーライター

    須永貴子

    元カノの幻影を追いかける24歳の青年が、友人や仕事相手、デリヘル嬢らと、恋愛談議を繰り広げる。主人公は一切自己批判をしない自己愛の強いキャラクター。映像は固定ショットの長回しを多用。恋愛談議にはアルコールが欠かせない。以上の特徴から、ホン・サンスの影響を強く感じた。粘度の高い主人公を、俯瞰で捉えて湿度低めに描くことで、微かなユーモアをにじませる。画作りは塩が一振り足りないが、ラストショットがとても鮮やか。終わりよければすべてよし。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    優しさしかない男は捨てられる。優しさの呪縛に息が詰まり、このままではダメになってしまうと女子は思うのだ。前原を捨てた「シミちゃん」等女子たちはみな自分を持っているが、前原は自分が何者かもわからず、自分を作ろうともせずにただ悶々と生きている。実話を基にしているだけあって、あまりのリアリティに気が塞がってくる。この時代に生きている男はみんな前原のようなもの。ラスト、前原が微笑むのは希望を手にしたからではなく、絶望と折り合いをつけたからだと思う。

  • 映画評論家

    吉田広明

    五年越しの付き合いの彼女に振られた男が、一か月様子を見る。やさぐれてみたり、仕事で知り合った女性に言い寄ってみたり、風俗に行ったり、彼女とうまくいった友人に絡んでみたり、とりとめない出来事、微妙な感情の揺れ動きが淡々と描かれて、それでもそれなりに見ていられるのは、本人の体験だという主演俳優の、イタいが愛嬌のある存在感によるだろう。拘束される映画館だからこそ成立する作品ながら、不意に出来事が生起する映画的瞬間があるかと言えばそれも疑問ではある。

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