東京の恋人(2019)の映画専門家レビュー一覧

東京の恋人(2019)

MOOSIC LAB2019長編部門で最優秀女優賞と松永天馬賞を受賞した下社敦郎監督作を単独劇場公開。結婚を機に映画監督の夢を諦め、北関東に移り住んだ大貫立夫はある日、学生時代の恋人・満里奈から連絡を受け、数年ぶりに東京へ向かうが……。出演は「五億円のじんせい」の森岡龍、「メイクルーム」の川上奈々美。
  • 映画評論家

    川口敦子

    度を越して長い引用をご容赦いただけるなら「もちろんホームに戻ったからと言って何かが元通りになるわけではないし新しい人生が始まるわけではない。ただ単に葬り去られたものとしての彼ら自身による不在の営みがそこから始まるだけである。しかし死んだものはもう死なないのだとジム・ジャームッシュが言うようにわれわれは単にそれを繰り返せばいいのだ」(boidマガジン妄想映画日記)と「心の指紋」について書かれた樋口泰人さんの美しい言葉をそのままこの映画に重ねたい。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    今泉力哉の諸作品にも通じる「搾取恋愛」の?末を描いた、きわどい関係性映画。ただし、今泉作品の根底にカサヴェテス的な重さが宿っているのに対し、下社敦郎にはジャームッシュ的なスノッブとセックスに対するあっけらかんとした諦観があり、それが奇妙な口当たりのわるさ(欠点ではない)につながっている。いかにも撮影のために用意しました、といった感じの漫然とした空間の切り取り方はマイナス。川上奈々美の表情が終始素晴らしく、なるほどこのラストしかないと思わせる。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    いいと思った。下社監督、甘いかな、となるところでも心を感じさせる。映画、どういう夢か。なぜこだわるのか。真剣に考えたことのある者の心だ。映画を学び、音楽もやってきた。最後のラジオの伊藤清美の声まで、音の入り方に楽しさがある。男性陣の演技はなんとなく抑えが足りないが、森岡龍には、映画から逃げても現実に対してスキありの男のリアルさが、いちおうある。魅力的なのは、過去と現在の変化に応じた輝きと抗議を全身的に表現する川上奈々美。彼女に感謝したい。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事