夜空を飛ぶ兎の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
ファンタジー部分のヴィジュアルがショボすぎる。予算が少ないなかで工夫を試みる心意気は微笑ましいが、お面や被り物、衣裳、アニメーション、音楽のどれもがあまりにも観賞者の世界と地続きで、異世界感が皆無。平板で薄暗いだけの映像も、ダークではあるがファンタジーではない。存在を否定はしないが、私服姿の役者たちのリハの記録映像もしくはビデオコンテのような本作は、観客のお金と時間を奪う「商業映画」のレベルには達していない。「観て」とは言えない。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
なんとも形容に困る一品である。「不思議の国のアリス」を狙ったんだろうか。それとも「オズの魔法使」なのか? ダンサーを夢見る女子が兎を妊娠したと言うが、父親は誰なのか。兎か? その兎もまったく出て来ないので、想像妊娠? だが、医者は妊娠しているという。それでこれまたその医者が女子の幻想世界でのいじわるな門番として再登場する。ファンタジーのつもりなんだろうが、こんな世界を夢見る気にはなれない。観ているうちに、小馬鹿にされているような気になってくる。
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映画評論家
吉田広明
兎を妊娠するとか、夢の中で夜空を飛ぶ兎を探しに行くというぶっ飛んだ発想、アニメ、影絵、ミュージカルを使用した語り。あまり万人に勧めようとは思わないが、官僚的な発想から遠いこういう映画があることが日本映画の幅を広げてくれる。ヒロインがファンタジー的な旅の終わりに出会うのが、シビアでリアルな現実であることで、民話ないし童話の残酷さに通じる映画と判明する。地味目な女子なのに、踊りだすとオーラを発揮する主演女優の振れ幅、存在感がこの映画を成立させている。
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