カサノバ 最期の恋の映画専門家レビュー一覧

カサノバ 最期の恋

数々の女性と浮名を流したジャコモ・カサノバと若い娼婦の恋の行方を描くドラマ。18世紀のロンドン。パリから亡命してきたカサノバは、そこで出会った若い娼婦マリアンヌ・ド・シャルピヨンに心酔。あらゆる手段を講じて彼女を手に入れようとするが……。出演は「ティエリー・トグルドーの憂鬱」でカンヌ国際映画祭男優賞に輝いたヴァンサン・ランドン、「ポップスター」のステイシー・マーティン。監督は「マリー・アントワネットに別れをつげて」のブノワ・ジャコー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    ほとんど同じ話でアラン・ドロン制作・主演「カサノヴァ最後の恋」という劇的な作品があった。原作はA・シュニッツラー。本作はカサノヴァ自身の回想録が原作となる。ダルデンヌ兄弟の共同製作とあって、リアルで劇的な演出ではない。アルベルト・セラ「ルイ14世の死」のように、歴史上の人物の神話性をR]ぎ取り、凡庸な物語へと引き戻す姿勢。従来の誰もが虜になる美男子のカサノヴァ像とは掛け離れ、ヴァンサン・ランドンが一般人の等身大の新しいカサノヴァを提示して見せた。

  • フリーライター

    藤木TDC

    #MeToo時代にカサノヴァとは挑発的。しかし男性客の膨らむ下心をよそに主人公はストイック、若い細身のツンデレ娘に翻弄され、バードキスに達しては突き放されウジウジ悩む弱気なカサノバだ。そもそも30代のカサノヴァ(「最期~」とはひどい)を還暦のV・ランドンが演じるのは無理があり、しかも開巻から1時間経っても情事はほとんど発展しないので官能を期待するとガッカリする。あえて#MeToo時代のカサノバを描いたシニカルな喜劇とも解釈できるが私には笑えなかった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    現在の世界的な状況や時代性において、映画でただ「老いらくの恋」や「恋の駆け引き」だけを堂々とテーマにするのは開き直りに近い。しかしこの作品ではそれも味というか、呆れつつも一周回って意外に楽しめた。新しい要素や斬新な視点に挑戦するのではなく、品位をもって説明しすぎず、ゆるゆると情景を収めている空気にフランス映画の名残が見えた。ブノワ・ジャコーにこれまでいまいち特性を感じてこなかったし、本作も緩い印象なのだが、刺激の淡い食間の一服としてアリ。

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