13月の女の子の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
口づけすら交わされないが、至近距離で微笑み合う女子高生二人の間に流れる、友情を超えた感情。その想いに突き動かされて世界線を超えていった先のディストピアで、どんなにひどい世界でも、好きな人と一緒にいることを選ぶ本作は、『「百合映画」完全ガイド』の続篇が刊行されるなら、間違いなく収録されるだろう。荒廃した世界をサヴァイヴする女子高生たちの「汚し」の甘さに脇の甘さを感じる。映画としてよりも、若手女優カタログとしての利便性を追求したのだろうか。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
パラレルワールドと来れば、普通あっちの世界は楽園と思いたい。が、死んだ親友に会いたくて行ったあっちの世界は、震災後の山間に閉ざされた、息の詰まるような高校だった。そこは、女生徒と教師しかいない閉ざされた世界なのだ。食糧はやがて底をつく。女生徒の一人が、誰かを外界へ偵察に向かわせようと提案。それは体のいい追放なのだ。その誰かが投票で決まり、みんなに見送られて学校から出ていく。元々の舞台作品が震災設定を得て、面白くなったようだ。
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映画評論家
吉田広明
一種の異世界転生ものと言えるだろうが、当該ジャンルでは主人公が、現実世界の特性を持ったまま異世界で生きてゆく、その経験が主題となる。異世界だろうが、それなりの制約下で生きてゆくその過程こそが重要なのだ。しかし本作では異世界の中で主人公はただ周囲の出来事を消極的に眺める視点に過ぎず、その中で真に生きていない。これでは異世界の意味が全くないし、よってディストピアめいた設定も白々しいのみ。異世界は単に死んだ親友を生き返らせるためのギミックに過ぎない。
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