東京バタフライの映画専門家レビュー一覧
-
映画評論家
北川れい子
よくある設定。よく聞く台詞。お馴染みの挫折。おなじみの未練。過去にケジメをつけるためのレコーディングもいつか見たシーン。そういう意味では、これからも繰り返されるに違いない普遍的な青春映画ではある。けれども、このシーンの後はこうなるだろうなと思っていると、台詞までほとんどこちらの予想通りで、うーん、困った。1990年生まれという佐近監督の身近な題材なのだろうが、燃焼しきれないまま現実と妥協するとは、30歳、早すぎる。ムダに長回しが多いのも気になる。
-
編集者、ライター
佐野亨
白波多カミンと松本妃代、この二人の表情(以前に顔立ちだろうか)がもつ豊かな「含み」が、語られていること以上の背景を観る者に読ませてしまう。それにくらべると、男性陣は一様に茫洋としていていまひとつ面白みに欠ける。それぞれの生活を歩み始めたバンドメンバーが、いかなる感情の変化を経て再集結を果たすかが物語の肝だろうが、そもそもなぜ彼らが音楽に執着するのか、その依って来るところがわからない。生活と音楽、もっと根源的な部分でつながっているはず。
-
詩人、映画監督
福間健二
勝負は、現実にシンガーソングライターである白波多カミンの魅力をどう見せるかだったろう。細身、控えめ、幼そうな感じと芯のつよさの同居など、言ってしまえばフェアリーテール的なものを呼び込んでいるのに、話の展開は現実の大変さに対して飛ぶところがない。でも負けっぱなしでは終われないね、というもの。佐近監督、手堅すぎる。最後の歌がもうひとつ迫ってこない。音楽、なぜやるのか。「根拠なき使命感」という言葉が放たれる。それを映画の表現として叩きだしてほしかった。
1 -
3件表示/全3件