クライマーズの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
昼でも夜でも不自然に役者の顔を照らし続ける陰影の欠けた照明、個性もメリハリもない大仰な劇伴、説明的なモノローグに導かれて転換していくシークエンス。日本を含むアジアの大作映画の一部に共通するそうした作風は、必要以上にエアコンがキンキンに効いていて、時代遅れのヒットソングが大音量で流れている、蛍光灯の白々しい光に包まれた地方のショッピングモールを自分に想起させる。そういう作品に限って、内向きの国威発揚映画だったりするから目も当てられない。
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ライター
石村加奈
序盤の60年登頂の回想シーンからクライマックスに昇りつめたまま、ラストまでハイテンションの125分。セカンドステップで、仲間の背をハシゴ代わりに裸足で登り、凍傷で足を切断したソンリンのヒリリとするエピソードは、チャイニーズラダー誕生秘話へと結実。15年のブランクを物ともせず、鮮やかなハシゴさばきで雪崩から若い隊員を守るファン隊長の活躍にはツイ・ハーク&ダニエル・リーのアクションへの変わらぬ情熱に感じ入った。おさげ姿のチャン・ツーイーにもびっくりだ。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
60年と75年にチョモランマ登頂に成功した中国登山チームの実話がベースの「山脈アクション」。当時の情勢に翻弄されるチームメンバーたちの葛藤、男女のお互いの想いが伝えられないメロドラマ、親友同士の過去の因縁など、実直なキャラクターたちによる展開は型通りに進みすぎて、感情がなかなか揺さぶられない。吹雪の中の登山シーンは、ロケとセット、CGをバランス良く合成したクオリティの高い映像で、生々しさはないが、自然と対峙する恐怖が堪能できる。
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