ヘルムート・ニュートンと12人の女たちの映画専門家レビュー一覧

ヘルムート・ニュートンと12人の女たち

『VOGUE』誌をはじめとするファッション誌で女性を撮り続けたファッション・フォトグラファーの巨匠ヘルムート・ニュートンの生誕100年を記念し、その撮影の舞台裏を、彼にインスピレーションを与えた12人の女性たちの視点から捉え直したドキュメンタリー。シャーロット・ランプリングやイザベラ・ロッセリーニ、ハンナ・シグラなどといった女優たちや、米国版『VOGUE』編集長のアナ・ウィンター、モデルのクラウディア・シファーらのインタビューを収録、ニュートンを鋭く批判した批評家スーザン・ソンタグとのTV討論のアーカイブ映像なども紹介する。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    ドキュメンタリーにおいて、扱われている「題材」を語ることは出来ず、私たちが見ているのは、単なる「映像」作品だ。本作では、「映像」と「画像」の決して交わらない軌跡が描写される。説明過多の映像ドキュメンタリー作品としては平均的だが、その対立構造として「映像」が「画像」に敗北していき、初めて自らの存在意義を逆説的に獲得しているようである。ニュートンの欲望やある種の文化を暴くと同時に、ニュートンの作品を利用し、「映像」の本質を自己言及的に裸にしていく。

  • フリーライター

    藤木TDC

    懐かしやH・ニュートン。日本のヘアヌード解禁に多大な影響を与えたファッションフォトの巨匠のドキュメントはスキャンダラスなタイトルとは裏腹に、拍子抜けなほど明るく健康的。輸入写真集ブームだった80年代は厳格なイメージだったのに、実は剽軽なオッサンだった素顔と愛妻物語、みなすっかりオバハン化したモデルたちのガハハ証言で構成。荘厳にして豪奢、俗悪な傑作写真を多数見せてくれ評伝としても優秀。若い人たちにぜひ見てほしい。バブル期アートの真髄がここに。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    写真が素晴らしいので、惜しみなく作品が映し出されるだけで座持ちしている。有名な写真の逸話が関係者から語られ、被写体となったモデルや女優たちが回想するのが興味深くて観れてしまう。作家性、生い立ち、私生活といったテーマ別にトピックスが出来ているのも飲み込みやすい。女性の裸体への執着、嗜虐趣味やルッキズムについて、登場する女性たちが批判的な表現を若干混じえつつも、擁護する論調なのは最大の味方。夫婦愛の深さも写真の背徳性を打ち消して切ない後味となる。

1 - 3件表示/全3件