ハッピー・バースデー 家族のいる時間の映画専門家レビュー一覧

ハッピー・バースデー 家族のいる時間

カトリーヌ・ドヌーヴ主演によるビタースウィートな家族ドラマ。夏のある日、フランス南西部の豊かな自然に囲まれた邸宅で、家族が集まり母アンドレアの70歳の誕生日祝いが始まろうとしていた。だが行方不明だった長女が突然帰郷、誕生会を大混乱へ導いてゆく。共演は「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」のエマニュエル・ベルコ、「冬時間のパリ」のヴァンサン・マケーニュ。「よりよき人生」のセドリック・カーンが監督を務め、長男役で出演もしている。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    冒頭からロメールを彷彿する陽光は、普段バラバラな家族が母親の誕生日に一同が会するロメール風物語を紡ぐ。次男のロマンが映像、孫娘のエマが演劇、そしてこの映画自体が歌わないミュージカルの構造となっている。難破船から人魚が救出してくれる物語であるが、この一家もまた常に荒波に揉まれている。問題児の長女クレールは、家族を危機に直面させる嵐であり、救いだす人魚でもある。人間の喜怒哀楽の新鮮な表情を見事に並べ、まるでヌーヴェルキュイジーヌだが仏伝統料理だ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    本作のドヌーヴはNHK朝ドラの祖母役みたいな分別ある賢女像で面白味がない。招かれざる家族の帰還テーマはかなり既視感あるし、起きる波乱もお約束ばかり。嫌がられつつ家族にカメラを向ける自称映画監督の次男坊が撮影する映像が重要な伏線かと思いきやそうでもない。短所ばかり目につくが、邦画にもよくある同題材作品と違い、着地点を厳しく描き現実的課題をつきつける。逃避していないぶん後味はだいぶ悪い。逆に食事シーンは旨そうに撮れており食欲を刺激するのが皮肉。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    「観ていればそのうちわかる」と言わんばかりの、いまいち相関図がわかりにくい登場人物たちが一堂に集うシークエンスから慌ただしく始まるのが、フランス流大人の語り口というか。そして全員が何かしらの精神的、性格的問題を抱えているのも家族映画の本領発揮ぶり。その迷惑さが生々しくてイラッとくるキャラは演出の上手さだが、中にはいかにも常套句的にトラブルを起こすキャラも混在していて、監督の思い入れの違いだろう。突き詰めれば全部金という夢のなさは息が詰まる。

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