ある人質 生還までの398日の映画専門家レビュー一覧

ある人質 生還までの398日

ISの人質となり、奇跡的に生還したデンマーク人写真家の実話を映画化。怪我で体操選手の道を断念したダニエルは、夢だった写真家に転身。シリアの非戦闘地域を訪れるが、ISに誘拐され、拷問を受ける。家族は巨額の身代金を用意するために奔走するが……。原作は、プク・ダムスゴーの『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還』。監督は、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニールス・アルデン・オプレヴ。共同監督・出演は、「幸せになるためのイタリア語講座」出演のアナス・W・ベアテルセン。出演は、2017年ベルリン国際映画祭シューティング・スター賞を受賞したエスベン・スメド、「ストレイ・ドッグ」のトビー・ケベル。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    白昼の砂漠を背景にISが世界中に配信した人質殺害の映像の数々は、当時あまりに衝撃的だった。日本人ジャーナリストも被害にあった。ISの思想と日本のサブカル思想との温度差が激しく、不謹慎ながら殺害映像のアイコラも出回った。劇中語られる「自分の将来が予測できることが退屈。しかし世界を変えたい」。オウム心理教などへ入信したエリートたちの言葉とも重なる。本作はイスラム教とキリスト教との対比として描写されるが、「悪のテロリスト像」だけでは世界は変わらない。

  • フリーライター

    藤木TDC

    佳作だが観賞後の爽快感はゼロなので、コロナ禍のもとで観るなら気重は覚悟しておくべき。監禁された人質=主人公、母国の家族、プロ交渉人の三視点から描かれるも、大半は人質の監禁・拷問・殺害の残虐シーンで、そこだけ論ずれば囚人映画として目新しい演出はない。ISはならず者と描かれている。しかし映画は彼らの暴虐の根源にある米国の中東政策やグアンタナモ収容所問題にも触れる。それを同盟国として日本が支持している責任について思い至らなければ本作を観る意味はない。

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