パーム・スプリングスの映画専門家レビュー一覧

パーム・スプリングス

サンダンス映画祭史上最高売買額を記録したタイムループラブコメディ。結婚式に出席したナイルズと花嫁の介添人サラ。二人はロマンチックなムードになるが、謎の老人に突然弓矢でナイルズが襲撃され、肩を射抜かれる。ナイルズが近くの洞窟に逃げ込むと……。製作及び主演は、ドラマ『ブルックリン・ナイン-ナイン』のアンディ・サムバーグ。出演は、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のクリスティン・ミリオティ、「アメリカン・ビューティー」のピーター・ギャラガー、「セッション」のJ・K・シモンズ。監督は、本作が長編デビューとなるマックス・バーバコウ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    “ループする一日”という題材は、近年の同ジャンルである「ハッピー・デス・デイ」シリーズ、配信作品「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」における様々な新趣向や、個性的な主人公の魅力によって更新されている感があるが、本作はこれら2作ほどには過激でも先鋭的でもないため、93年公開の「恋はデジャ・ブ」以前に後戻りしているように思える。主要キャストの悪ふざけはさして笑えず、ループを続けて日々を繰り返した末の登場人物の精神的な境地は、浅いところに留まっている。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    このタイムループ・コメディは、A・サムバーグの主人公がすでに長年ループ中にいて、C・ミリオティを巻き込む点がユニーク。よって二人の噛み合わない遣りとりが、上級生と新入生よろしく面白い。加えて、タイムループの中にいる二人を通して、人生の哲学的考察もちらり。つまり老いることなく好きな人との関係が輪の中で続く幸せと、反対に歳を重ねながら生き死ぬことの、どちらが意味ある人生か。大人のジョークが連発するお遊びモードの喜劇には意外な隠し味が仕込まれている。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    タイムループというSFジャンルは、ストーリーを転がすのが思いのほか困難であり、初期設定のセットアップを終えて、主人公がループの状況を受け入れて以降は、繰り返しの描写が増えて中だるみしがちで、劇中人物同様に作り手も物語をいかに循環から脱出させるかが勝負になってくると思うのだが、本作はあらゆる工夫を施した脚本とアップテンポな演出で退屈をはねのけた末に見事な着地を決めている成功例で、いくつかの思考実験要素がさりげなく練りこまれていることも素晴らしい。

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