ミナリの映画専門家レビュー一覧

ミナリ

オスカー常連のA24とPLAN Bがタッグを組み、サンダンス映画祭で観客賞とグランプリを受賞したドラマ。1980年代、農業で成功することを夢見る韓国系移民のジェイコブは、アーカンソー州の高原に家族と共に引っ越すが、厳しい現実が立ちはだかる。出演は、「バーニング 劇場版」のスティーヴン・ユァン、「ファイティン!」のハン・イェリ、「藁にもすがる獣たち」のユン・ヨジョン、「ハロウィン」のウィル・パットン、「ヴェノム」のスコット・ヘイズ。監督は、新鋭リー・アイザック・チョン。
  • 映画評論家

    小野寺系

    文学や映画では「怒りの葡萄」、TVドラマでは『大草原の小さな家』を思い出す、移民の定住と家族の物語が展開。アメリカの白人がフロンティアスピリットを正面から描くことができなくなっているなか、アジア系の監督と出演者が、その根源的なテーマを引き継いだことが、そのまま作品自体の強さとなっている。「クレイジー・リッチ!」、「フェアウェル」から、さらに飛躍を遂げた“アジア系のアメリカ映画”であり、この試みは、とくに文化史のなかで象徴的な位置付けとなるだろう。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    葛藤を端正に語っていると言ったらいいだろうか。夫婦、二人の子ども、妻の母らの登場人物は、それぞれの立場で葛藤を抱えているが、各人の胸の内を仰々しくないシーンで表現している。配役のうまさが際立ち、なかでもユン・ヨジョンのぶれないマイペースぶりが物語の要となる。葛藤や失望などの感情を、彼女が静かに吸収し、その結果、家族はむろん、見る側にも救いをもたらす上品な結末に感じ入る。夢の実現のために家族を振り回す夫の独善は気になるが、素直な展開がしみる。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    息子の病気療養の意味合いもあるが、主には農地開拓での成功を夢見る自身の山っ気により家族を巻き込む形で何もない田舎に引っ越してきた『北の国から』の黒板五郎のような父親の行動、言動は、子を持つ親の視点で見るとなにかとイライラしてしまうのだが、子どもとおばあちゃんのキャラクターが可愛らしく、終盤まで大した出来事もなく進んでゆく家族の物語は骨太な演出に支えられて観飽きることがなかったがゆえにこの唐突な幕切れでは物足りなく、もう少し続きを見たいと思った。

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