アンモナイトの目覚めの映画専門家レビュー一覧

アンモナイトの目覚め

ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンが共演したラブストーリー。人間嫌いの古生物学者メアリーは、ひょんなことから化石収集家の妻シャーロットを預かることに。自分とは正反対のシャーロットに苛立つメアリーだったが、次第に惹かれるようになる。監督は、「ゴッズ・オウン・カントリー」のフランシス・リー。プロデューサーは、「LION ライオン 25年目のただいま」のイエン・カニング。第73回カンヌ国際映画祭、第45回トロント国際映画祭オフィシャルセレクション選出作品。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    デビュー作「ゴッズ・オウン・カントリー」でのいきなりの達成にはジョシュア・ジェームズ・リチャーズのカメラが欠かせなかったと思っていただけに、本作におけるフランシス・リーの映画作家としての不変の姿勢とその力量に深く首を垂れた。時代や都市や消費社会に背を向けて、ピンポイントで現代的イシューを射抜くその鮮やかさ。セリーヌ・シアマやアンドリュー・ヘイの諸作品と並べると、現在のヨーロッパ映画で起こっている大きなシフトがより正確に見えてくるのではないか。

  • ライター

    石村加奈

    地質学界も、社交界も、男性社会にうんざりした二人の主人公は、好対照だ。独立独歩の古生物学者メアリーは頑丈そうだが、孤独に弱く、裕福な化石収集家の夫に厄介がられるシャーロットは脆そうで、商売上手なタフさもある。カメラはしばしば二人の手を捕らえるが、メアリーのよく動く働き者の手が次第に鈍くなる反面、シャーロットの手は、メアリーのノートを奪い、刺繍をさし……大胆になっていく。青から赤へ劇的に変わる衣裳も、二人の変化をフェアに物語っていて、面白い。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    19世紀、寂れた海辺の町で二人の孤独な女性が出会い惹かれあっていく、という物語は、どうしても昨年の個人的ベストの某フランス映画を思い出してしまうが、本作は歴史に埋もれた実在の女性古生物学者メアリー・アニングを虚実ないまぜで描くことで彼女の生き様、その背景を“再発掘”する作品だ。展開は淡々としているのにカッティングが細かく、メアリーの行動は情熱的なのに表情は常に硬い。その終始矛盾を孕んだ空気感が彼女の人生の機微をリアルに浮き彫りにしている。

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