アメリカン・ユートピアの映画専門家レビュー一覧

アメリカン・ユートピア

    元トーキング・ヘッズのフロントマン、デイヴィッド・バーンによるブロードウェイ・ショーを「ブラック・クランズマン」のスパイク・リーが映画化。バーンが11人のミュージシャンやダンサーとともに計21曲を演奏し、現代の様々な問題について問いかける。振付は、過去にもバーンの舞台を手掛けたアニー・B・パーソン。プロダクション・コンサルタントは、バーン一家のアレックス・ティムバース。撮影監督は、「サマー・オブ・サム」のエレン・クラス。
    • 映画評論家

      小野寺系

      アルバム完成後のライブとしての役割を持ちながら、配線を見せない趣向でショー形式に表現されるステージが画期的だと評されている本公演。そのような世評もデイヴィッド・バーンの知性とシニカルなセンスあってのことだろう。だからこそ、多様なルーツを持つ演奏者らが並ぶ舞台の上で、アメリカ社会の一つの理想的な姿を表現してみせる“あざとさ”に心打たれ、彼をして真っ直ぐにならざるを得ない危機的状況に動揺できる。スパイク・リー監督の起用理由は最後まで観ると納得できる。

    • 映画評論家

      きさらぎ尚

      客席とカメラ。両者の眼の位置の違いにより、舞台作品の映像化には不満が残ることがある。この作品は例外。映画用に企画・ステージングしたかような映像に特有の、機能性と美しさを発散。グレーのスーツに裸足という、ミニマムを象徴する削ぎ落とされたルックに加え、歌・ダンスも、統制されたマーチングバンド風の動きにも無駄がない。トーキング・ヘッズ時代から変わらぬD・バーンの特異的知性に、世界を危機が覆う今日、信じるに足りる可能性を、S・リーには新境地をみた。

    • 映画監督、脚本家

      城定秀夫

      デイヴィット・バーンと11人の仲間たちによる100分に及ぶパフォーマンスは圧巻のひとことで、投げかけられるメッセージの数々は時代や人種を超えた人間愛に溢れており、このステージを映画として世に送り込んだスパイク・リーの作家としての確然たる視座にも感動するのだが、コロナ禍の現代に生きる我々に強く響くであろうこの映画をコロナ禍であるがゆえに家のモニタで観ざるを得なかったというのは皮肉で、公開のあかつきには劇場の大スクリーンと大音響で改めて堪能したい。

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