ブラックバード 家族が家族であるうちにの映画専門家レビュー一覧

ブラックバード 家族が家族であるうちに

オスカー女優のスーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットが初共演し母子を演じたドラマ。夫と暮らす静かな海辺の邸宅に娘たちとその家族、家族同然の親友を集めたリリー。彼女はある理由から死を覚悟し、最後の時間を過ごすために彼らを呼んだのだった。デンマーク映画「サイレントハート」を同作の脚本家クリスチャン・トープがアメリカ映画として脚色し、「ノッティングヒルの恋人」のロジャー・ミッチェルが監督を担当。出演は、「アリス・イン・ワンダーランド」シリーズのミア・ワシコウスカ、「ジュラシック・パーク」シリーズのサム・ニール。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    尊厳死を決めた母親を巡り家族が一晩だけ過ごす物語。途中サスペンス風になり潮目が変わる瞬間がある。それは残された側の誤解を生み出し、決定をした側からの回答は理解を超えた見解へと向かう。そもそも尊厳死が引き起こす「愛」ゆえの齟齬なのだが、果たして尊厳死とは精神性を重んじた人間らしい選択なのか、もしくは先端医療による生命維持が人工的で人間らしいのか。作品では尊厳死自体は宙吊りにされる。人は人間関係の中で、自分を通しての他人ためにしか生きていけない。

  • フリーライター

    藤木TDC

    難病ALSと安楽死についての重いテーマだが、第一に生きる選択肢を患者が助言されたり家族で熟慮しない点、第二に夫や子らが殺人罪等に問われる可能性を認識していない点に脚本の浅さが。また予告された母の死を前にした家族の諍いや告白は喜劇に見えかねない極端さがあり、S・サランドン、S・ニールの真摯な演技がシリアスに留めているものの、そのあまりに高潔な性格設定は現実味が薄い。観客に深い思索を求めるより高級住宅CMのような表層的心地よさを優先した印象。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    オリジナルのデンマーク映画「サイレント・ハート」は未見。家族が一堂に会した際に起こる揉め事映画の、それっぽいパターンが一通り揃えられている。安楽死の是非を問う物語のようながら、理屈ではわりきれない感情を描く。しかし情緒不安定な娘が、母の死に対して「受け入れるための時間がほしい」と訴えるのは、切羽詰まった愛というより未熟さに見えた。母の親友に関する展開も、友情があるならもっとせめぎあいがあると思うので、愛の動きが自然に見えず気持ち悪い。

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