カラミティの映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
すでに何度も映画化されている実在の人物を従来以上に史実に忠実かつ現代的に再創造しようとする方向性は買いたいが、同じオレゴン・トレイルを舞台とした「ミークス・カットオフ」などと比べると、やや単純で優等生的すぎる印象。人物のアクションに関連するアニメ表現にはそこまで惹かれるものはなかった一方で、ナビ派やフォービズムの色調を踏まえたという、高畑勲の後期監督作あたりを想起させる、写実とは異なる鮮やかな色彩で塗り分けられた風景の美しさには目を奪われた。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
西部開拓時代のガンマン、カラミティ・ジェーンの幼少期を描く本作は、予想に反して彼女が一発も発砲しないのがまず良い。また「女性らしさ」を求められる時代にあって、ジェーンは髪を切り、スカートを脱ぎズボンを履く。しかしその行為は男装ではない。つまり男社会へと参入し、そのなかで優秀であることとは根本的に違うのだ。あくまで荒野を動き回るうえで最適な格好をしているだけであるという本作の身なりの変遷は、性を一つのテーマとしている映画の演出として大変好ましい。
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文筆業
八幡橙
氷に囲まれた北極を舞台にした前作「ロング・ウェイ・ノース」同様、レミ・シャイエ監督が独特のマットな色彩の内に描く、性別の壁を越えた一人の少女の過酷なる冒険譚。善とも悪とも単純には判別つかない曲者が次々現れ、主人公の旅をややこしくするのも前作同様。だが、カラミティ・ジェーンの子供時代を描く本作は、活劇の魅力が格段にアップ。清々しいカタルシスの中迎えるエンディング、そこで流れる主題歌に震えた。荒野を駆ける馬、夕日、満天の星――大自然の描写も美しい。
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