リル・バック ストリートから世界への映画専門家レビュー一覧

リル・バック ストリートから世界へ

    世界的ダンサー、リル・バックの半生に迫るドキュメンタリー。アメリカ・テネシー州メンフィスのゲットーで育ったリル・バック。チェロ奏者ヨーヨー・マの演奏で踊るその姿を、スパイク・ジョーンズが偶然携帯で撮影し投稿したことから、彼の未来が動き始める。監督は、「ブラック・スワン」の振付師であるベンジャミン・ミルピエを追ったドキュメンタリー『Dancing is Living : Benjamin Millepied』で知られるルイ・ウォレカン。
    • 文筆家/女優

      睡蓮みどり

      ダンスとはこんなにすごいものなのかと思い知る。血の滲むような猛練習を感じさせない無重力に生きるかのようなしなやかな動き。古典とストリートを融合させた新しいスタイルに始終目を奪われる。治安の悪いメンフィスに生まれ育ち世界的ダンサーとなるまでの奇跡の物語であると同時に、リル・バックの飄々とした軽やかな人物像にも惹きつけられる。世界が広がってゆく瞬間を見た。特に映画後半のスピード感に安心して身を委ねることができ心地よい。創作意欲を刺激する幸せな作品。

    • 映画批評家、東京都立大助教

      須藤健太郎

      物語性が希薄である。むろん良い意味だ。基本は時系列に沿って進んでいくので、展開はやはり成功譚を免れないものの、どこか起伏に欠けているのだ。メンフィスからロサンゼルスへ、そしてパリへ。あたかもストリートからショービズの世界へ、そしてアートワールドへの移行だが、この映画はそれをあくまで平行移動として描き、上昇の運動を導入しない。リル・バックはSNS時代のスターにちがいないし、その立役者S・ジョーンズは登場するとはいえ、それも逸話の一つにすぎない。

    • 映画監督/脚本家

      いまおかしんじ

      リル・バックという人を知らなかった。どういう人かを知るには、いい映画と思う。見れば見るほどすごいダンサーだ。どうやったらあんな動きができるのか。「瀕死の白鳥」も本当に鳥に見える瞬間がある。軽やかな動きは見ているだけで気持ち良かった。しかしこれ、ライブで見たらもっと楽しいだろうなと思ってしまった。それに、貧しい少年が努力の果てに成功するって話にいまいち乗り切れなかった。ダンスに興味がある人が見ればもっと面白かったかもしれない。

    1 - 3件表示/全3件

    今日は映画何の日?

    注目記事