沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家の映画専門家レビュー一覧

沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家

2007年に84歳で亡くなった“パントマイムの神様”マルセル・マルソーの知られざる半生に迫るヒューマンドラマ。1942年、ドイツ軍がフランス全土を占領するなか、マルセルは険しく危険なアルプスの山を越えて、123人のユダヤ人孤児をスイスへと逃がそうとする。出演は「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ、「TENET テネット」のクレマンス・ポエジー。監督は「ハンズ・オブ・ストーン」のジョナタン・ヤクボウィッツ。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    恥ずかしながらまるで知らなかったマルセル・マルソーのパントマイム以外の活動について学べたという点では有意義な作品だったが、肝心のパントマイムと絡んだ場面がことごとく冴えない。ラストへの伏線という狙いはわかるものの、観客の笑い声を過剰に強調するTVのお笑い番組のように、マルセルの動きを見て笑う人々の顔を捉えたショットがたびたび挿入される演出からは、演者の身体も観客の眼も信じきることができなかった作り手側の用心や不安が透けて見えるように感じた。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    神経質な顔つきと饒舌で早口という印象が強いジェシー・アイゼンバーグがパントマイムの神様とも評されるマルセル・マルソーを演じるというキャスティングに惹かれる。また、ユダヤ孤児と心を通わせるきっかけとなる火に息を吹きかけるというマイムが、あるときはナチの兵士を火だるまにするという変奏に顕著だが、レジスタンス運動に身を投じていた時期のマルセル・マルソーの映画化だけあって、抵抗運動あるいはナチスと芸術の絡み合いが律儀に時折ちらりと顔を覗かせる。

  • 文筆業

    八幡橙

    存在しない物を見せ、存在する物を消し去る。パントマイムの魔力を随所に生かし綴られる、ナチに立ち向かったマルセル・マルソーのレジスタンスの日々。自らホロコーストを生き延びた者の子孫だというヤクボウィッツ監督の、ただ感傷に流されず芸術としての映画の力に堂々依った姿勢に感服。「大脱走」的なスリルの連打と、悪役(シュヴァイクホファーがいい)含む人物の造形が映画に引き込む。子供の頃、マルソーのパントマイムに漂う哀愁が怖かったが、この背景に改めて感じ入った。

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