モンタナの目撃者の映画専門家レビュー一覧

モンタナの目撃者

アカデミー賞受賞女優アンジェリーナ・ジョリーの『ソルト』以来11年ぶりのアクション映画。アンジーが人間には太刀打ちできない「大自然の脅威」と凄腕の「暗殺者」に行く手を阻まれながらも、少年を守るために戦う森林消防隊員ハンナを演じる。監督・脚本は「ボーダーライン」(2015)で初脚本を務め、監督デビュー作「ウインド・リバー」(2017)で第70回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を受賞したテイラー・シェリダン。「木を切り、火をおこす方法から教わった」と語るアンジェリーナ・ジョリーは、森林消防隊員のハンナを演じることは大自然でのサバイバルの連続だったと語る。過去に壮絶な事件を”目撃”したことで心に大きなトラウマを抱える森林消防隊員のハンナは、暗殺者による父の死を間近で“目撃”し、父が守り抜いた“秘密”のために暗殺者に追われる少年コナーとタッグを組む。背後に迫る凄腕の暗殺者、目前に立ちはだかる広大なモンタナの大自然に燃え盛る巨大な炎―2つの脅威に行く手を阻まれる極限状態で、少年を守り戦うサバイバルサスペンス。
  • 映画評論家

    上島春彦

    最初に辛口を書かせてもらうと前半、アンジェリーナのクロースアップが多すぎ。深刻の度が過ぎてもたれる。ラストのボロボロの顔だけでよかったのに。山林火災消火のスペシャリストが抱えるトラウマを、殺し屋二人組から逃げる少年の手助けに絡ませる作劇は巧妙だし、どこまでがSFXか判然としない山火事風景もさすがの仕上がり。注目ポイントはアンジェリーナも妊婦に扮するメディナ・センゴアも普通の女性であるところ。この二人は一緒に出る画面はないのだが、同志って印象だ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    質が高い往年のハリウッド製ディザスター映画を彷彿とさせる演出力が優れた作品。孤高の消防隊員を演じたアンジェリーナ・ジョリーももちろんだが、妊婦を演じたメディナ・センゴアもアクションシーンを好演しており、女性俳優陣が珠玉の布石。主人公ハンナが苛まれているPTSDが一つのテーマにあるが、少年を救うことによって自らも救われるのではなく、両親を共に失った少年の悲劇性との比較によって傷が緩和されたようにとれてしまう台詞を含む脚本には綻びがあるのでは。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    台本のト書きをそのままマルチアングルで撮ったかのような説明カットの連続に鼻白む上に、山岳レスキュー隊やパラシュート、暗殺部隊に山火事と、すぐにでも映画が立ち上がりそうな要素がいくつもそろっているにもかかわらず、それらがとっ散らかったまま最後まで像を結ばないのがなんとも残念だ。それでも、山火事の粉灰舞い散り色を失った闇夜の中を愛馬にまたがった黒人妻が猟銃片手に疾走していくシーンは、遠く「狩人の夜」を思わせる荘厳さと崇高さがあった。

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