今はちょっと、ついてないだけの映画専門家レビュー一覧
今はちょっと、ついてないだけ
伊吹有喜による同名小説を原作に、「パーフェクトワールド 君といる奇跡」の柴山健次監督が映画化。人気カメラマンとして脚光を浴びながら、表舞台から姿を消した立花。彼に写真を撮る喜びを思い出させたのは、シェアハウスに集う不器用な仲間たちとの日々だった。出演は「カフーを待ちわびて」以来13年ぶりの映画主演となる玉山鉄二、「おもいで写真」の深川麻衣、「孤狼の血」シリーズの音尾琢真。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
若い頃に売れてチヤホヤされたクリエイター系職業人の「その後」の話というのは、日本映画では珍しい題材かも。でも、それこそ「ゴーン・ガール」くらいの超絶プロットでも用意されていない限り、あまりにもありふれていて面白くなりようがないのではないか。商業映画として一定の技術的水準を超えている作品(情緒過多な劇伴のたれ流しには閉口したが)には最低点をつけないようにしているが、製作事業体に名を連ねている各自治体は別として、本作が想定している観客層がわからなかった。
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映画評論家
北川れい子
最近〈ちょっと〉気になったのはタイトルからして世間や人生から一歩引いたような作品が目立つこと。先に公開された「ちょっと思い出しただけ」、そして本作、6月公開の「どうしようもない僕のちっぽけな世界は、」など。ちょっととか、ちっぽけとか、卑下自慢とは言わないまでも、はなから日常に流されているようなタイトルは、これも時代の気分なのだろうか。ともあれ、ままならない現実をやり過ごしながら、少しずつ自分の殻を破っていく人々を描いたこの作品、ちょっと、いい。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
タイトルほど軽くなく、人物らを見てると、いや、ついてないとか、ちょっと、という話ではないよと思う。認識には同意するが、丁寧な生き方に行き着く前にひと花咲かせてからの挫折がある設定はそのひと花もおぼつかない世代には乗りにくいかも。ところで、前から気になるムーヴを見せている俳優高橋和也氏が本作でも熱い。だいたいポール・ムニ的変身を含む役づくりでスクリーンの一隅を占める高橋氏は虚構性の強い格好でディープな芝居をするが、あれで映画に劇がみなぎる。
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