リスペクト(2021)の映画専門家レビュー一覧

リスペクト(2021)

「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソンが、2018年に他界したソウルの女王アレサ・フランクリンを演じる伝記ドラマ。抜群の歌唱力でショービズ界の華となったアレサ。だがその裏に隠されていたのは、尊敬する父、そして愛する夫からの束縛や裏切りだった。共演は「ラストキング・オブ・スコットランド」のフォレスト・ウィテカー、「G.I.ジョー」のマーロン・ウェイアンズ。監督は『ウォーキング・デッド』などのTVシリーズを手がけたリーズル・トミー。
  • 映画評論家

    上島春彦

    先日鑑賞したアレサのドキュメンタリーとリンクするクライマックスに驚く。そこでも妙に抑圧された雰囲気の彼女。そういうわけか、と初めて納得。彼女を抑圧する親父フォレスト・ウィテカーも好演だ。それにしてもアレサが「望まれない妊娠」の当事者だったとは知らなかった。彼女に取りつく「魔」もそこに起因する問題かも。名門コロムビアに録音した〈ネイチャー・ボーイ〉で芽が出ず、新興アトランティックの〈ナチュラル・ウーマン〉で大成功とはまさに出来過ぎの実話である。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    起床=目覚めから始まる開巻の凡庸さに一抹の不安をおぼえたが、アレサ・フランクリンを演じるジェニファー・ハドソンの歌唱力と存在感は、文句なしに素晴らしい。しかし直近で公開されたブラック・ミュージックのドキュメンタリー映画「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」の熱気が記憶にまだ新しく色濃いために、劇中で挟み込まれる当時の映像やエンドロールでの本人の熱唱と比較してしまうと、映画自体の持つ強度がいささか弱く感じられもする。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    あの神秘的な体験をどう言語化したら良いだろう。たしかなのは本作鑑賞後、試写室のある青山通りから地下鉄に乗り、電車が多摩川を渡るまでの間、筆者の頬をあついものが流れ続けていたということだ。一度は神を殺しておきながらもまた神と生きざるを得なくなった弱くて自分勝手な生物が、アレサ・フランクリンという預言者を通して己の存在を受け取り直し祝福する姿は、名だたる宗教芸術にも引けを取らぬ、人類が育んだ文化の極点であり、何という恵みだと呟かずにはいられない。

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