笑いのカイブツの映画専門家レビュー一覧

笑いのカイブツ

テレビの大喜利番組やラジオ番組への投稿に心血を注いだ“伝説のハガキ職人”ツチヤタカユキの青春私小説を、「あの娘は知らない」の岡山天音主演で映画化。笑いに人生を捧げるツチヤタカユキは、念願が叶いお笑い劇場の小屋付き作家見習いになるが……。井筒和幸、中島哲也、廣木隆一などのもとで助監督を務めてきた滝本憲吾監督が、笑いに取り憑かれた男の純粋で激烈な半生を描く。主人公のツチヤタカユキを岡山天音、彼の才能を見出し東京に呼び寄せるお笑いコンビ『ベーコンズ』の西寺を「泣く子はいねぇが」の仲野太賀、ツチヤと意気投合するピンクを「ミステリと言う勿れ」の菅田将暉、ツチヤが思いを寄せるミカコを「恋のいばら」の松本穂香が演じる。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    “伝説のハガキ職人”の実話と聞けば、狭い話を想像するかもしれない。だが、実は『古見さんは、コミュ症です。』級に普遍的かつ感動的なドラマだった。破滅的に社交性がなく、話し声のボリューム調整もできない(分かる~!)主人公を岡山天音が身を削るように力演。脇に回った菅田将暉、仲野太賀の好演も沁みる。師匠・井筒和幸の遺伝子を感じる滝本監督の演出も静かに熱い。楽な生き方を選べない人、そんな不器用な純真さがこの世にあっていいと願う人、どちらの涙も汲む名作。

  • 映画評論家

    北川れい子

    タイトルの“カイブツ”とは当然、怪物のこと。是枝作品の「怪物」があり、サイコサスペンスの「怪物の木こり」があり、そして本作と、いまや“怪物”も押すな押すな! それにしても笑いに取り憑かれた男・ツチヤタカユキの変人、奇人ぶりは半端ない。寡聞にして今回初めて彼のことを、そしてハガキ職人なる言葉を知ったのだが、笑いを一切排して描かれるツチヤの笑いへの執念はかなり神がかり的で、笑い教の孤立した教祖もかくや。泣かせるより笑わせる方が難しいというが、なるほど。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    岡山天音に尽きる。目つき、挙動に至るまで、カイブツを演じる者は、その際自分がカイブツにならぬよう気をつけるがいいと言いたくなるほどの圧倒的演技。その分、〈人間関係不得意〉な姿が延々と続き、笑いを生む原動力や独自の視点で見つめる日常も、実直に描かれすぎて重苦しいほど。オードリーのラジオで断片的に聴く限りでは人間関係不得意ゆえの笑いが日常に転がっていた様子だけに、笑いが少ない分、2時間がシンドイと思ってしまう。安易な汗も涙も拒絶した作劇には好感。

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