カオス・ウォーキングの映画専門家レビュー一覧
カオス・ウォーキング
パトリック・ネスのSF小説『心のナイフ』をダグ・リーマンが映画化。西暦2257年。人類の新天地となる惑星では、男たちの思考がノイズとしてさらけ出され、女性は絶滅してしまう。ここで生まれた青年トッドは、地球から来た女性ヴァイオラと出会うが……。出演は「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のトム・ホランド、「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」のデイジー・リドリー、「アナザーラウンド」のマッツ・ミケルセン。
-
映画監督/脚本家
いまおかしんじ
かわいい映画だ。考えが、だだ漏れてしまう面白さ。主人公の男子がピュアなので、安心して見ていられる。女子と二人きりになって、考えることと言えばしょーもないことばかり。キスしようとして考えがバレるところ、かわいかった。犬もかわいかった。女子だけ考えがダダ漏れにならない設定も、なんで?なんだけど、お話にうまく組み込まれていて、効いていると思う。悪者が、典型的すぎてイマイチだった。もうちょい裏があったら、SF的に重層的な話になったかもしれない。
-
文筆家/女優
睡蓮みどり
どこか懐かしい匂いが始終漂っている。男性たちの頭の中が全部筒抜けになり“ノイズ”として現れるという未来の世界で、初めて女性という生き物を見たトム・ホランド演じる主人公が「可愛い子だな、キスしたいなー」などと思っている反応がうぶすぎるというか、なんだか苦笑いしてしまった。正直なところ楽しみにしていたのがマッツ・ミケルセンであったので、もっとマッツを見たかったというのが本音。重要な役どころで出てはいるものの、いかんせん足りなくて悔しい。
-
映画批評家、東京都立大助教
須藤健太郎
カオスとかノイズとかはったりもいいとこ。混沌ではなく秩序、雑音ではなく論理。この映画が依ってたつのは、旧態依然たるロゴス中心主義とその派生形態だ。頭の中にある考えが有意味な単語と構文に翻訳される、その時点でちゃんちゃらおかしい。むろん言葉だけでなく、映像と音声に翻訳される場合もあるが、結局は具象であり、ときに輪郭を曖昧にして想像であることを示すなど、その配慮は情けないばかり。思考とは何か。思考はいかに表象されるか。遊ぶなら本気でやってくれ。
1 -
3件表示/全3件