ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男の映画専門家レビュー一覧

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

巨大企業の隠蔽を暴くため闘った弁護士の実話を映画化。1998年、企業弁護士のロブは、大手化学メーカーの廃棄物によって190頭もの牛が病死させられたという調査依頼を受ける。やがて事態の深刻さに気づき、住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切る。製作・主演は、「アベンジャーズ」シリーズのマーク・ラファロ。監督は、「キャロル」のトッド・ヘインズ。出演は、「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイ、「ミスティック・リバー」のティム・ロビンス。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    息をもつかせぬ、とはこのことを言うと思った。全篇に漂う緊張感。どんどん事件に巻き込まれて、引き返せなくなっていく感じがたまらない。敵の巨大企業がいやらしくて腹が立つ。テフロンってそんな危険なものだったのか。びっくりした。主人公は、友だちがいなくて、信じている人が家族しかいないっていう少し歪んだキャラに設定されていて、それがすごく生きている。彼の狂気じみたこだわりや粘りは、職業意識だけでは説明がつかない。寂しくて意地になる。感動する。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    テフロンで有名なデュポン社がその危険性を隠していることに屈することなく闘う一人の弁護士の物語。闘いには長い長い時間がかかる。資金のある大企業のやり方はとことん汚い。ところどころ「MINAMATA」を思い出した。こうした実話を基にした意義深い作品ではあるが、予告篇だけで全てを見た気になってしまい、本篇を見てもとりわけ驚くべきことがなかった。主人公ロブを支える妻役のアン・ハサウェイは好きな俳優だが、今回は今ひとつはまっていなかったような気がする。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    T・ヘインズがこんなに巧みな職人になるなど、そのデビュー時は予想しえなかったはず。だが一見なんの衒いもなく見えたとしても、実はその衒いのなさこそがいちばんの衒いであると彼は知っているのだ。本作では産業公害を扱いながらも、それを糾弾するプロパガンダにはしない。「大統領の陰謀」(76)に連なる“内部告発もの”の枠内で、巨大な悪に立ち向かうアメリカンヒーローを造形するまでだ。その関心は現実に迫ることより意匠の洗練にあり、この点評価が分かれるだろう。

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