ドリームプランの映画専門家レビュー一覧

ドリームプラン

テニスプレイヤー姉妹、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズの破天荒な父リチャードの実話をウィル・スミス主演で映画化。テニス未経験の彼は娘たちを世界最強の選手にするため、テニスの教育法を独学で研究し、常識破りの計画=“ドリームプラン”を作成する。出演は、「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」のアーンジャニュー・エリス、「フェンス」のサナイヤ・シドニー、ドラマ『ゴッドファーザー・オブ・ハーレム』のデミ・シングルトン、「ザ・シークレットマン」のトニー・ゴールドウィン、「モンタナの目撃者」のジョン・バーンサル。第79回ゴールデングローブ賞作品賞、主演男優賞、助演女優賞、主題歌賞にノミネートされ、ウィル・スミスが主演男優賞を受賞。ほかに、ナショナル・ボード・オブ・レビュー主演男優賞・助演女優賞、パームスプリングス国際映画祭アンサンブルパフォーマンス賞受賞。アメリカン・フィルム・インスティチュートが選んだ今年の映画部門10作品選出。
  • 映画評論家

    上島春彦

    タイトルが映画の最後にようやく出る、というさりげないギミックが効果的。でもこのお父さん(リチャード)は王というより道化なんだよね。なので使われているストック・フッテージ(最後に出る)の方が可笑しい、ということになっちゃった。ただしウィル・スミスのキャリアには前世紀後半の黒人史を体現するという野心が時折見られ、本作も好演。アレサ・フランクリンの伝記映画同様この映画の主題も「リスペクト・ユアセルフ!」としていい。ニーナ・シモンの歌声もグッドグッド。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    人種の権力構造には敏感な父親がジェンダーのそれとなるとあまりにも鈍感でしかなく、そんな頑なな父親と周囲との諍いの時間が長すぎるのに徒労感をおぼえた。ウィル・スミス主演であり父親の方に焦点をあてられた作品であることを承知の上でもなお、才能ある娘がキャリアを進めていくにあたってすべての「黒人女性」の代表性を纏って商品化されてしまう危うさを丁寧に掬い上げてほしかった。とはいえサクセスストーリーへのカタルシスもあり、試合シーンの臨場感も素晴らしかった。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    コーチ、教官、監督、父、王、呼称は何であれ、他者に身体的な動作を命じる地位についている存在の不可思議さについてずっと考えていた。非常にシンプルにそれぞれのキャラクターがそれぞれの信念=信仰をもって夢の実現に取り組む姿が演出・撮影されていて、容易に他者の侵入を許さないシングル・ショットの連続は、アメリカ的な「独立した個人」なるものを強く感じさせながらも、彼らが近づいたり離れたりしながらも共存し生成されていく「アメリカ」の強度をも浮き彫りにする。

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