選ばなかったみちの映画専門家レビュー一覧

選ばなかったみち

「耳に残るは君の歌声」のS・ポッター監督が自身の経験をもとに書き下ろした物語。NYに住むメキシコ人移民レオは認知症で、娘モリーとの意思疎通も困難になっていた。ある日、モリーが隣にいながら、レオは故郷メキシコや一人旅したギリシャの幻想を見る。出演は、「ノーカントリー」のハビエル・バルデム、「マレフィセント」シリーズのエル・ファニング、「ハドソン川の奇跡」のローラ・リニー、「フリーダ」のサルマ・ハエック。第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。
  • 映画評論家

    上島春彦

    主人公(認知症者)の現実(一日)を、妄想をからめた彼の二つの過去の一日に交錯させ描くという発想。しつこい現実音の取り入れ方が巧みで飽きさせない。ただし物語が無茶。主人公の娘さんが自分の人生を左右する可能性のある仕事日に、わざと親父さんを歯医者と眼医者に連れていくというのが分からない。キャンセルしなさい。苛立つ方が間違ってるよ。語りが滑らか過ぎて観客を驚かせる趣向がないのも評価できない理由。妄想こそが現実だ、という無茶ぶりで良かったはずなのに。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    サリー・ポッターはかつて監督・脚本を担当した「オルランド」で、ヴァージニア・ウルフの原作小説を深い理解とともに換骨奪胎させて見事に映像化していた。性の境界を自由に往来するティルダ・スウィントンが本作では時空間を自由に往来するハビエル・バルデムへ。しかし新作も幻想的な物語を紡いでいく手法は通じるものの、何かが物足りない。父親の「選ばなかったみち」を観ていたのか、娘の「選ばなかったみち」を観ていたのかが攪乱させられるような結末の仕掛けには唸ったが。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    巨匠が盛りを過ぎた頃に撮りがちな、監督自身が投影されたであろう老作家が今までの人生を振り返り、何らかの救いを見出すシリーズ。NY、メキシコ、ギリシャを舞台に起きる、ぐうの音も出ないほど素朴で小さな出来事の中を、いつもの「演技をしていないように見えるけど実はかなり細かくしてます」感がバッサリと削ぎ落とされフラットになったハビエル・バルデムがさまよい、それを演技派女優への転身を図っているであろうエル・ファニングのオーバーだが好感が持てる芝居が支える。

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