屋根裏のラジャーの映画専門家レビュー一覧

屋根裏のラジャー

イギリス文学協会賞を受賞した詩人・作家A.F.ハロルド作『The Imaginary』を基にした、「二ノ国」の百瀬義行監督によるファンタジーアニメ。想像から生まれた友だちイマジナリである少年ラジャー。イマジナリは人間に忘れられると消えていく運命にあり……。制作は、「メアリと魔女の花」を送り出したスタジオポノック。CMで注目され「妖怪大戦争 ガーディアンズ」などに主演してきた寺田心、実写作品のみならずアニメ『どろろ』など声優としても活動する鈴木梨央のほか、杉咲花、寺尾聰をはじめ、安藤サクラ、仲里依紗、山田孝之、高畑淳子、イッセー尾形ら実力派俳優陣が声の出演をし、想像から生まれたイマジナリーフレンドたちが現実と想像が交錯する世界で繰り広げる大冒険を描く。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    スタジオポノックがようやく叩き出した最良の成果。しかもアニメ史に残る大いなる挫折……あの高畑勲も宮_駿も撤退した『リトル・ニモ』の無念が、まさかここで晴らされるとは。夢、もしくは想像の世界を舞台に、観客の心を?む冒険活劇は成立可能か?という難題に、西村義明プロデューサーは果敢に立ち向かった。キャラが多すぎとか、説明台詞がくどいとか文句もあるが、それでも立派な快作である。ベテラン百瀬義行の満を持しての監督登板、小西賢一作画監督の大活躍も嬉しい。

  • 映画評論家

    北川れい子

    いつか子どもたちが夢を見なくなると私たちは消えちゃう、とイマジナリたち。想像上の世界は現実には決して勝てないのか。かなり悩ましいストーリーを、温かみのある色調と各キャラクターたちの言動でスリリングに引っ張り、アニメが苦手な大人でも楽しめるに違いない。一種のパラレルワールド仕立てで進行、特に意外性のあるキャラが次々と登場する想像世界は、背景も大きくワクワクする。小さなキャラがウジャウジャ密集する演出は宮_アニメをチラッ。声優陣もキャラにぴったり。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    海外児童文学を主体とするポノックの存在価値を周知させる良作。想像世界を具体化させる話だけに、アニメーションならではの表現が際立つ。舞台となる書店や図書館にはフェティッシュなこだわりが欲しかったが、老犬やピンクのカバなどは忘れがたい魅力。彼岸と此岸を往復する霊界映画としても突出。「千と千尋の神隠し」を思わせる場面もあるが、本家が自己模倣をする時代だけに気にならず。脚本はプロデューサーが兼任のようだが、公式サイトにもプレスにも未記載なのは何故か。

1 - 3件表示/全3件