ワン・セカンド 永遠の24フレームの映画専門家レビュー一覧

ワン・セカンド 永遠の24フレーム

チャン・イーモウが文化大革命を背景に、娘への父の想いを描いたドラマ。強制労働所送りになった男は、妻に愛想を尽かされ離婚し、最愛の娘とも縁を切られてしまう。数年後、ニュースフィルムに娘の姿が1秒だけ映っていると知ると、脱走してフィルムを探す。出演は、「オペレーション:レッド・シー」のチャン・イー、本作がデビュー作となるリウ・ハオツン、「愛しの故郷」のファン・ウェイ。2021年トロント国際映画祭正式出品作品。
  • 映画評論家

    上島春彦

    映画は一秒で連続写真が24コマ進む、ということをタイトルは示す。そこに映し出される被写体を巡る物語。と記述した程度では、映画を説明したことにならないか。文化大革命で罪人となり、収容所に送られた男がたどる数奇な運命。と言っても分かる人は限られる。かくいう私もこの愚挙政策について現在の中国政府がどういう態度なのか知らない。監督の青春時代の記憶に触発された好企画。ではあるがいつの間にか、この監督の映画はどこかで見たような画面の連続になってしまった。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    映画というメディウムについての巨匠チャン・イーモウなりの純然たる寓話。寂寞とした砂漠地帯の遠景ショットが何度も反復させられることにより、映画館の密集性は殊更強調される。コロナ禍によって一時的に失われたそんな密集性やデジタル化によって失われていったフィルムの持つアナログ性に対する懐古趣味的なロマンに満ち満ちている。「初恋のきた道」などに代表されるイーモウ映画のヒロイン像もかつてより何ら変わらず、それもこの作品の懐古趣味の一翼を担っているのだろう。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    焼け焦げた龍のように埋葬されていたフィルムが人民の手によって息を吹き返し、神々しく復活する。デジタル全盛の時代に、銀塩フィルムのマテリアルとしての価値を再び問うという本作のアティチュードには涙せずにはいられない。一方で見逃してはならないのは、濁りや粒子などの穢れをことごとく排したように見える本作自体のデジタルな手触りである。監督が参考にしたであろう、ジョン・フォードや黒澤明だったならばどんなデジタル映画を撮っていたのか想像せずにはいられない。

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