シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声の映画専門家レビュー一覧

シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声

2009年、愛する人を戦況が激化するアフガニスタンへ見送り、その帰りを待ちながらイギリス軍基地で暮らしていた女性たちが合唱団を結成して互いに励まし合った実話を、「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ監督が映画化した、笑って泣けるハートフル・ストーリー。合唱団結成を主導した二人の妻ケイトとリサを、米アカデミー賞ノミネート&英国アカデミー賞(BAFTA)受賞のクリスティン・スコット・トーマスと、BAFTAノミネート経験者のシャロン・ホーガンが熱演。女性たちが見つけた自分を表現する場所と、大切な人を想う仲間たちとの絆を描く。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    設定上仕方ない側面もあるとはいえ、主人公たちが反戦ビラを配る青年を軽くあしらう場面には違和感を覚えた。しかし、ユーモアで愛する家族の死を乗り越えようとする物語を中核に据えることで、全体としては題材の特殊性をうまくカバーできている。また、ツボを押さえた演出によって合唱団のメンバーそれぞれから血の通った魅力を引き出している点も見逃せない。彼女たちが少しずつトラブルや軋轢を乗り越えていく様子を丁寧に捉えた、老若男女誰が観ても元気の出る一本だ。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    イギリス軍基地での日常生活から合唱団を結成する経緯、結束するための気づきを得る瞬間など、映画を支える様々な描写が過不足なくウェルメイドに語られ、素直にハートフルな気持ちにさせられる。「誰かを想うとき」というのが根幹をなすテーマだが、想う相手を安易にカットで繋がず、不在のものに対してのリアクションを中心に据える演出も手堅い。特にハイライトである戦没者追悼イベントでの合唱は、小細工なしに女性たちの声と表情だけで描き切るところにはとても共感した。

  • 文筆業

    八幡橙

    原題を直訳すると、「軍人の妻たち」。「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ監督が、今度は実話を基に苦境の中でも逞しく歌い、生きる女たちを活写。いわゆる「銃後の」人々の物語だが、「ひなげしではなくヒマワリに」の台詞のとおり、ただ待つばかりでない存在として一人一人の個性を絶妙に際立たせた脚本が見事。息子を亡くした痛みを隠し、通販番組の沼にハマりながら生きる大佐の妻を筆頭に、秘めた思いを抱える者たちが心の澱を歌にして吐き出す過程。その丹念な描写に唸った。

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