ロストケアの映画専門家レビュー一覧
ロストケア
42人もの老人の命を奪い、その殺人を“救い”あるいは“介護”であると主張する連続殺人犯と、彼の罪を強く非難する検事の対決を描き、なぜ犯人は殺人を犯したのか、その真相に迫る社会派エンターテイメント。主人公の心優しい介護士・斯波宗典を松山ケンイチ、懸命に事件を解き明かそうとする検事・大友秀美を長澤まさみが演じ、初共演を果たした。監督は「そして、バトンは渡された」「老後の資金がありません!」の前田哲。現在の日本が抱える社会と家族の問題に正面から切り込み、ひとりひとりの心の中にある《正義感》を大きく揺さぶる問題作。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
同じ前田哲作品として、実は隣接したテーマを扱っているとも言える「老後の資金がありません!」との作風の違いに面食らったが、それが良いか悪いかは別として(きっと良いことなのだろう)映画としては本作の方が安心して身を委ねることができる。気になったのは、松山ケンイチ演じる介護士周りの最初から裏があるのがバレバレな親切設計すぎる演出で、サスペンス要素を期待していると肩透かしを食らう。とはいえ、長澤まさみともども、メインキャスト2人はさすがの好演。
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映画評論家
北川れい子
介護が必要な人を42人も殺した介護士・斯波は、ボクがやらなかったら家族が殺していたかも、と平然と検事に言う。要介護人がいる家族の共倒れ状態を、日常的に目の当たりにしてきた介護士による大量殺人。やがて斯波の殺人に至る動機が見えてくるのだが、へヴィで痛い話が、ギリギリのところで娯楽性を保っているのには感心する。斯波役を松山ケンイチが、検事役を長澤まさみが演じていることで、まるでスター映画のように、役の方が二人に従っているからだ。でも見応えあり。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
昨年夏までネットメディア記者をしていたが2020年夏にALS患者さんの嘱託殺人が知られ、それを受けて日本維新の会の馬場伸幸と松井一郎が安楽死推進を表明したとき多少その問題に触れた。松井氏には質問する機会もあったがそのとき感じつつ記事にできなかったことは、彼は自分がそういう立場になったら死にまっせと今は思っているらしいこと。最近話題の成田悠輔とかもそうかもしれん。だがそれをリアリティとして他者に敷衍して、人命尊重の線を下げるのは愚かだし、悪だ。
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