ヴィレッジ(2023)の映画専門家レビュー一覧

ヴィレッジ(2023)

主演・横浜流星×監督・藤井道人で贈る異色のサスペンス・エンタテインメント。「村」という閉ざされた世界を舞台に、そこで生きる人々のリアルな姿を通して、同調圧力、格差社会、貧困などの社会構造の歪みを抱えた現代日本の闇をあぶり出す。どこにも居場所を見つけられずに生きてきた青年・優が、唯一の希望を守るためダークサイドに転じる姿を横浜流星が体現する。企画・製作・エグゼクティブプロデューサーの故・河村光庸の遺志を継いで、スタジオ・スターサンズの制作チームが結集して完成させた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「線は、僕を描く」に続いて「横浜流星と日本の伝統文化」という組み合わせ(今作では能)ながら、都市と村、陽と陰、上昇と下降、学生と労働者、と対照的な本作。藤井道人の演出は題材に良くも悪くも生真面目に引っ張られすぎる傾向があって、日本の村社会における陰鬱な人間模様を、閉塞感に満ちた重厚なタッチで描いていく。役者にとっても監督にとっても新境地という点では一定の成果を上げている作品ではあるが、抜けの良さとケレン味が足りず、心の沸き立つ瞬間があまりなかった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    この社会派サスペンスを観ながらショートショートの名手・星新一の「おーい でてこーい」を連想した。嵐の後、地面に深い穴が。人々は穴に向かって、おーい、と叫び、小石を投げてみる。やがて人々はその穴に地上のあらゆるゴミを捨てはじめ、地上はきれいサッパリ。とある日、空からおーいと言う声と共に小石が降ってくる。本作における穴は、産業廃棄物の不法投棄だが、伝統、世襲、因習が根強く残る、横溝正史ミステリー的な村を舞台にしたエグい展開は、通俗的だが痛烈だ。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    日本はムラ社会、というのを言うだけの快感にとどめず、見ごたえのある村のヴィジュアルを作りこんだうえで見せたのが面白い。画が深く、デカイ。引きの画面に結構なスケール感があり力がある。ごみ処理施設というネタが単純に善悪の判定ができぬように物語に入っていたり、なぜか能、しかし見ているとそれが全体から抜きがたいものだったり、この要約不可能、解析困難さに一個の映画を感じる。監督藤井道人と俳優横浜流星は、新作がまさに質的に新しい、という日々を生きている。

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