ビースト(2022)の映画専門家レビュー一覧

ビースト(2022)

アフリカのサバンナを舞台にしたサバイバル・アクション。医師のダニエルズは二人の娘たちを連れ、亡き妻と出会った南アフリカへ旅行する。ところが、密猟者の悪の手から生き残り、人間への憎悪に満ちたモンスターライオンが出現し、死闘を繰り広げることに。出演は、「ザ・スーサイド・スクワッド  極 悪党、集結」のイドリス・エルバ、「マレフィセント」のシャールト・コプリー。監督は、「エベレスト3D」のバルタザール・コルマウクル。脚本は、「ランペイジ 巨獣大乱闘」のライアン・イングル。
  • 映画評論家

    上島春彦

    例の恐竜映画で分かるように実写とSFXの共存は今や常識なのだが、ただし金がかかる。この映画の面白さは、比較すればずっと低予算なのに手持ち風かつ極端な長回しのSFXを駆使する画面にある。映像素材が加工されている印象が少なく、実写を活かす。だからこその、シャープな実験精神を味わいたい。いわゆるファミリー・ムーヴィー的な甘さはない。父と娘の不仲という物語の核も効果的。お母さんの死は、別居していたお父さんに責任がある、という長女の頑固な主張が結構怖い。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    サバンナをかき分けて歩む登場人物たちの同行者へと擬態した、つねに動き続けるフィリップ・ルースロのカメラが臨場感を高めてゆく。さらに、つなぎめを意識させない流麗な編集もそこに加担する。南アフリカの深刻化する密猟問題を背景に、人間の犠牲になった野生動物との戦いが行き着く結末にもひと捻りあった。感傷的な局面を迎えても決して速度を止めずに突き進む。自然との対峙を描いた「エベレスト3D」をはじめ熟練のコルマウクルだけあって映画の質自体は高く、及第点。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    各キャラクターの行動原理がてんでわからないので、もっさりと動く幼児用アトラクションに乗せられているような体験であった。それにしても、30年前のB級パニック映画ならまだしも、2022年にこの醜悪な人間中心主義はさすがにマズいのではないだろうか。人間たちの蛮行によって「ビースト」にならざるをえなかった天然の存在を人間たちが馴致した人工物と競わせるなんて。こうした作品を無自覚に流通させることとサバンナの動物の牙や皮革を密輸することに大きな差はあるのか。

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