地下室のヘンな穴の映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
フランス的エスプリの感覚というのか、老いをめぐる不安を掘り下げすぎず、あくまでも深刻さを感じさせない洒脱なコメディとして仕上げようとするセンスがはまれば大いに楽しめるだろう。しかし、クソ真面目に老いの問題を引き受けたゆえに突き抜けたユーモアに達した「チタン」あたりと比べると、悩みを受け流そうとするような本作の笑いは、切実に恐怖と向き合うことを避ける姿勢にも見えてしまった。終盤突如物語がハイライト化する演出も、ギャグだとしたら完全に失敗だろう。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
中を通るだけで、12時間経過はするが3日若返るというヘンな穴と、電子化された男性器という二つの仕掛けを使って、性的魅力や若さ、男性性や女性性といったものへの執着と、そのこっけいさが描かれる。突拍子もないアイデアと大胆なアプローチだが、そこに映されている人々の反応や物語の展開は、いたってありふれたものであるのが面白い。一切のセリフもなく、各々がなるようになっていく姿を淡々と観察していくクライマックスの十分間には、乾いた笑いがこぼれそうになる。
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文筆業
八幡橙
マルコヴィッチから過去の芥川賞受賞作まで、古今東西“穴”とは人を異界へいざなう奇妙な入口。とはいえ「12時間進んで3日若返る」穴なんて前代未聞、突飛すぎる発想に違いない。決して若くはない二組のカップルによる物語、「老いへの抗い」という単純なテーマを描いているようで、穿って見るなら重ねた歳月=年齢に実体を伴い切れない中高年の焦燥を掘り下げた哲学的な逸品、なのかも。「ピアニスト」のブノワ・マジメルがこの役を!との驚き含め、人間の穴の深さに身も竦む???
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