ファミリアの映画専門家レビュー一覧
ファミリア
山里に暮らす陶器職人の父と海外で活躍する息子、そして隣町の団地に住む在日ブラジル人青年の3人を中心に、国籍や育った環境、言葉の違い、血のつながりを超えて、強い絆で“家族”を作ろうとする人々を描いた人間ドラマ。現在、280万人の外国人が暮らす日本で、実際に起きた事件などをヒントにした、いながききよたかのオリジナル脚本を映画化した。主人公・神谷誠治に役所広司、息子の神谷学を吉沢亮、在日ブラジル人青年マルコスと彼の恋人エリカを、共にオーディションで選ばれた在日ブラジル人のサガエルカスとワケドファジレ。さらにマルコスらを執拗に追いかける半グレのリーダー・榎本海斗をMIYAVI、誠治の友人で刑事・駒田隆を佐藤浩市、地元のヤクザ・青木を松重豊が演じるほか、中原丈雄、室井滋らが共演。監督は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」の成島出。
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脚本家、映画監督
井上淳一
浅い。ブラジル人を守るため、役所広司は自ら半グレに刺される。「グラン・トリノ」と同じじゃないか。半グレのボスは街の有力者の息子。「野性の証明」か。息子を失い、他人の子と擬似家族になるラスト。「グエムル」じゃん。いつかどこかで見た設定。しかも10年以上前にやられている。在日ブラジル人、海外テロ、社会問題も人間もすべて深掘りされることはない。この時代に敢えてファミリアと家族を謳うなら、新しい価値観を見せないと。浅いだけじゃなく、安い。どうした、成島出?
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
いわば日本版「グラン・トリノ」。いながききよたかの野心的な脚本と映画化を実現したスタッフ・キャストに拍手を送りたい。赴任先のアルジェリアで国際結婚した息子をもつ陶工と、排他的な半グレの暴力に苦しめられる在日ブラジル人たちの出会いと共感。そんな大胆な設定の物語を豊田市の団地を舞台にリアルに描き出す。役所広司が主人公の心の軌跡を繊細かつダイナミックに表現している。成島出監督も団地と土地の匂いを逃さずとらえ、硬質なドラマに血を通わせている。
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映画評論家
服部香穂里
何の罪もない人間が呆気なく生命を落としてしまう、不穏な現代社会への憤怒が全篇に漲ってはいるが、その象徴のごとき半グレ集団のリーダーにも、単なる逆恨みに留まらない行動原理を与えないと、大切な存在を亡くした者同士の齟齬から生まれる暴力の悲劇性が、いまひとつ際立たたないように思われる。「グラン・トリノ」を彷彿とさせる終盤の展開も、まだ枯れるには早すぎる現役バリバリの役所広司ゆえ、本作ならではの着地点を、とことん追究してみてもよかったのではないか。
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