ベネデッタの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
修道院での同性愛というと、つい土居通芳監督の清々しい傑作「汚れた肉体聖女」を思い出してしまうが、これは予算が百倍くらい違う、ドロドロのスペクタクル巨篇。権威(暴力)とフラジャイルなエロスが対立せず、一人の聖女の身体に組み込まれている複合感覚はまさしく「ロボコップ」から連なる監督独自の物で、その分、冗談か本気か分からないところもある。つまり聖痕が偽物であることでかえって輝きを増すみたいな印象を、偽善とも偽悪とも判定せず放り出してるのが妙に面白いのだ。
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映画執筆家
児玉美月
神秘体験が身に起こっていく主人公のベネデッタという女性が、嘘をついて権威的な立場へ昇りつめようとする策略者なのか、あるいはイエスへの愛を従順に誓う信仰者なのか、観者によってまったく異なる人物像がそこに浮かび上がってくるような巧妙に曖昧にされた描き方が本作の肝要か。シャーロット・ランプリングがいい味を出しているが、ヴァーホーヴェンは過去作「エル ELLE」で一風変わった性暴力被害者を演じたイザべル・ユペールといい、上の世代の女性俳優を魅力的に撮る。
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映画監督
宮崎大祐
ドライヤーにしろブレッソンにしろデュモンにしろ、古今東西の巨匠であれば一度は挑戦しなければならない頂と言ってもいい聖女伝説に、強い女性の演出に定評があるヴァーホーヴェンが挑戦ということで、どんな演出が炸裂するのか楽しみに鑑賞していたが、暴力演出ではあいかわらずの才気を発揮するものの、本作の肝であるセクシャルな演出においては全盛期の「氷の微笑」はもちろん、「インビジブル」にも遠く及ばない出来で、どうにも不完全燃焼感が残った。巧いは巧いのだが。
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