雑魚どもよ、大志を抱け!の映画専門家レビュー一覧

雑魚どもよ、大志を抱け!

映画監督、脚本家、小説家として活躍する足立紳が、師匠ともいえる相米慎二監督に一度だけ褒められた脚本を基に20年がかりで実現させた企画。地方の町に暮らす生意気ざかりの7人の小学生男子を主人公に、コンプレックスや葛藤を抱えながらも、人生の何かをつかみ取ろうとする日々を描く青春映画。足立監督の十八番であり、分身ともいえる“情けない主人公”を演じるのは、関西ジャニーズJr.内のグループ「Boys be」のメンバーとしても活躍する池川侑希弥と、「CUBE 一度入ったら、最後」の田代輝ら、オーディションで選ばれた子役たち。瞬の明るい教育ママに臼田あさ美、パパに浜野謙太、親友・隆造の前科持ちの父親に永瀬正敏らが大人パートを担うほか、足立監督の前作「喜劇 愛妻物語」に出演した新津ちせも、瞬の妹役で出演。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    自分の中のズルさや臆病さにはいくつになっても慣れない。そういう意味では、この映画で描かれる事象は普遍なのだろう。だからなのか、大人が書いた借り物競走感がどうしても拭えない。相米オマージュの長回し。しかし本当に撮るべきは「台風クラブ」や「夏の庭」のような、本物に見える子供っぽさではなかったか。母の乳癌やヤクザ親父や宗教ママを入れながらも、ドラマに見せないドラマ作りは見事。だが何かが足りない。可もなく不可もない作品は難しい。他の人の評価が聞きたい。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    時に傷つきやすく、時に残酷な11?12歳の子供たちの複雑な心理がリアルに描かれている。今でいうハブる(仲間外れにする)とか、ハブられる、という関係は40年前も今もそう変わらない。さらに言えば、子供の社会も大人の社会もたいして変わらない。違うのはそれがどういう具体的な行動として表面化するか。カツアゲを拒んで中学生に呼び出された主人公の意を決した行動を、相米慎二ばりの長回しのカメラでとらえるショットに、足立紳のやむにやまれぬ思いが充満している。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    多感な少年期の出逢いと別れの物語も、彼らの前に立ちはだかる謎のトンネルなどの道具立てにも、ジュブナイル映画としての既視感は否めないが、“普通”であることにコンプレックスを抱く主人公が、各々に事情を秘める友人らの家庭を垣間見て、自分がいかに恵まれているかを再確認する過程が、丹念に綴られる。そんなナイーヴな息子の目を見開かせる乳がん闘病中の母親が、臼田あさ美の好演も相まって、足立紳作品の少々露悪的な女性像に連なる、豪快で開けっぴろげな魅力を放つ。

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