崖上のスパイの映画専門家レビュー一覧

崖上のスパイ

第94回米アカデミー賞 国際長編映画賞 中国代表に選ばれた、チャン・イーモウ監督によるサスペンス。1934年冬の満州国ハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイ・チームが極秘作戦に潜入するが、そのミッションは天敵である特務警察に察知されていた。出演は「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」のチャン・イー、リウ・ハオツン、「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣」のユー・ハーウェイ、「1950 鋼の第7中隊」のチュウ・ヤーウェン、「桃(タオ)さんのしあわせ」のチン・ハイルー。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    スパイの女の子がかわいすぎる。手とか小さくて子供のようだ。こんなスパイいる??彼女は暗号担当。チームの頭脳。ちゃんと設定があって納得する。列車の中で男の首を締めるとき、クルクル宙を回って相手をやっつける。重苦しい題材の中にちゃんとエンタメアクションがある。敵方のおっさんは冴えないオヤジなのにやたら機転が利く。ひたひたとスパイたちを追い込んでいく。騙し騙されの応酬。嘘がいつバレるかのドキドキがずっと続く。何発撃たれても死なないのはご愛嬌。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    生々しい拷問シーンが多くついつい薄目がちになってしまう。革命には血が流れる。大勢の人が死ぬ。星取りでも繰り返し言ってきたことだが、それを新作として作られることに対して、手放しに賛美することはできない。中国映画第6世代の映画作家ロウ・イエと第5世代の本作監督チャン・イーモウの作品をほぼ同じタイミングで観ることで考えさせられることは多い。完成度の高い映画ではあるものの疑問も残る。中国という国が何を見せたいのかは「崖上のスパイ」からよく伝わってくる。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    緊張感に欠けるサスペンスの演出においては拙いスパイ映画であり、覇気のないアクションにおいては活劇のなり損ないであり、主題の政治性を骨抜きにしている点ではシリアスな映画としても通じない。おそらく多くの観客がこの映画を目にして落胆することだろう。しかし、これは「失敗作」ではないのだ。失敗は傑作を目指すという野心があってはじめて成り立つものだが、この映画にはそもそも野心が欠けているからである。野心のなさはときに美徳というけれど、それはまた別の話。

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