逆転のトライアングルの映画専門家レビュー一覧

逆転のトライアングル

スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(17)に続き、カンヌ国際映画祭史上3人目の2作品連続パルムドールを受賞した逆転劇。2億5000 万ドルの豪華客船が沈没、乗り合わせた様々な立場の人々は、流れ着いた無人島でゼロからのサバイバルを繰り広げる。ファッション業界の光と影、ルッキズムや現代階級社会の問題を驚くべき人間観察眼とブラックユーモアで痛烈に炙り出す監督の手腕が光る。主演は「キングスマン:ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン、本作が遺作となってしまったモデル出身のチャールビ・ディーン。フィリピンのベテラン女優ドリー・デ・レオンや名優ウディ・ハレルソンらも参加。第95回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞の3部門でノミネートされている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    大いに笑える箇所は多々あるのだが、一方でいかにもカンヌが好みそうなわかりやすくシニカルで知的なユーモアの質がやや鼻につくところも。過激さで照れ隠しをしつつも、ウディ・ハレルソン演じる酔っ払い船長がマルクスを引用する演説場面に監督の本音が現れていることは明らかで、カネとクソとゲロを並べる下品だが理に適った演出から、なぜか邦題で無用なネタバレをかましている逆転の展開まで、総じて秀才インテリが頑張って頭で考えた資本主義社会への風刺という印象は拭えず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    男性よりも女性のほうが給料が良いという、男女格差の逆転が起こっているモデル業界に身を置く男女のカップルが、ディナーをどちらが奢るかという言い争いを始める、第一パートがすこぶる面白い。華やかな設定でありながら、あまりにも卑近なやり取りが繰り広げられるギャップ。そしてそこから見えてくる日常的な不均衡さを皮肉を込めてエレガントに描いている。これ以降のパートも十分に楽しめ、とても良くできてるように思うが、逆転の構図が見えすぎているような気もした。

  • 文筆業

    八幡橙

    なかなかに強烈かつ痛烈。原題の「悲しみのトライアングル」は眉間の皺をも意味するようだが、男女の立場や貧富、美醜など、さまざまな価値の逆転を風刺たっぷりに描く内容を見る限り、的を射た邦題と言えるのかも。約2時間半の長尺も、笑いあり毒あり意外性ありで、飽きずに楽しんだ。コンプライアンス重視の現代の抱える矛盾を、どちらか一方に偏ることなくストレートに突く野心作。汚物各種の大噴出も厭わぬカンヌ2連覇リューベン・オストルンドの攻めの姿勢に今後も刮目。

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