The Son 息子の映画専門家レビュー一覧

The Son 息子

「ファーザー」のフロリアン・ゼレールが、自作戯曲『Le Fils 息子』を映画化。妻子と幸せに暮らす弁護士ピーターの元に、前妻との間の息子ニコラスが、一緒に暮らしたいと現れる。ピーターは17歳のニコラスを家庭に受け入れ、同居が始まるが……。出演は「グレイテスト・ショーマン」のヒュー・ジャックマン、「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」のローラ・ダーン、「ファーザー」のアンソニー・ホプキンス。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    俳優の顔に焦点を当てた室内での会話劇という性質上、映画というよりは演劇に近い印象。そのせいで、各人物のやや紋切り型に寄せた性格造形が、余計にわざとらしく感じられてしまう面もあったか。とはいえ、名優たちの演技がどこにでもいるような人物像に一定のリアリティを与えることで、重厚で誰もが考えさせられる内容になっているとは言えるし、とりわけ10代の不安定さを見事に体現した息子ニコラス役のゼン・マクグラスが、彼らに引けを取らない存在感を発揮しており素晴らしい。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    悩める息子を理解しえると勘違いしているヒュー・ジャックマン演じる父親の滑稽さと、その滑稽さを真面目に、そして深刻に見つめるカメラのアンバランスさに妙な味わいを覚えた。この不均衡さが、息子の不安定な精神にリンクしていると見えなくもない。そんな息子、父親の揺れる心情に対して、一場面の登場ながらヒュー・ジャックマンの父を演じたアンソニー・ホプキンスのまったくブレない父権性を振りかざすさまはさすが。必要以上にセクシーに描かれるヴァネッサ・カービーも印象的。

  • 文筆業

    八幡橙

    逞しく完全無欠に見える父親の不貞により、母と共に打ち棄てられ、行き場を失くした少年の絶望と葛藤。父のまた父の代から続く根深い系譜を核に、ゼレール監督は今回も幾重にも積もった複雑な思いを、少年のみならず、取り巻くすべての人々の立場に目を配りつつ細密に、濃やかに描き出す。リビングでダンスに興じるシーンの明るさの裏に横たわる罪悪感や苦み、諦観の底知れぬ深さよ。観る者の価値観をまっすぐ問うラストにも、ただ息を呑んだ。鈍痛が尾を引く余韻を含め、圧巻。

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