サイド バイ サイド 隣にいる人の映画専門家レビュー一覧

サイド バイ サイド 隣にいる人

行定勲が企画・プロデュースを担当し、行定作品の脚本を手掛けてきた伊藤ちひろが原案・脚本・監督を務めた作品。目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年・未山は、その力で人々を癒やしながら、恋人の詩織やその娘・美々と静かに暮らしていたが……。出演は「ヘルドッグス」の坂口健太郎、「映像研には手を出すな!」の齋藤飛鳥、「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」の浅香航大、「TANG タング」の市川実日子。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    長い。とにかく長い。描写の一つ一つが全体にどう寄与しているか分からない。無駄に見える描写が最後まで観ると無駄ではなかったというのが本来のあり方のはず。しかし霊が見えるという設定を含め、すべて分からない。エブエブはちゃんと分かったのに。風呂敷の広げ方は同じなのに。役者が誰一人として魅力的に見えない。鍵であるはずの画も弱い。音も貧弱。この手の映画にはこの手の映画のやり方があるはず。脚本では成立していたのか。映画を早送りで観る人の気持ちがわかった。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    そこに思いを残す人の姿や、強く思っている人の姿を透視する能力をもつ主人公(坂口健太郎)が、自身に起因する幻視に悩まされる。自分探しという主題はこの監督の前作「ひとりぼっちじゃない」から一貫しているし、視覚的イメージが物語を転がしていく点も共通する。幻覚が実際に画面に現れるという点で、この作品ははっきりマジックリアリズムといえるし、監督の資質はそこらにあるのだろう。現実と幻想が混在するふわふわした世界に、市川実日子が重力を与えている。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    本題に入る前のやたらと長い前振りが、結局は伏線といえるほどの機能も果たさず終わる徒労感。スピリチュアルなものにでさえすがりたくなる鬱屈した現代の気分を具現化するがごとく、ミステリアスな雰囲気を漂わせる青年の過去の一部が、なかなかのクズっぷりを印象づけるのも災いし、生と死、現実と記憶などが混然一体となったアピチャッポンもどきの世界観も、男女の痴情が絡んで濁って見えてくる。美的感覚を注ぎ、意味ありげな映像をつなぐだけでは、映画の神は舞い降りない。

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