世界の終わりからの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
ファンタジー的な導入部には身構えたものの、意外にも現代日本を舞台にリアリズム描写で展開するシーンの比率が高く、過去の紀里谷作品のイメージを裏切ってくる。「夢」の階層まで登場する本作の射程には「インセプション」あたりがありそうだが、少なくとも作品のルックにおいて途中で興醒めするようなことがないのはさすが。野心的なSF作品として、岡本喜八「ブルークリスマス」の系譜に置きたくなるようなチャームも。ところで、どうして官房長官の名が「是枝」なのだろう?
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映画評論家
北川れい子
作品は多くはないが、監督デビュー作「CASSHERN」以来、一貫して派手な仕掛けに強烈なキャラ、ビジュアル先行型のエンタテインメント作品を手掛けてきた紀里谷監督に、いったい何が? いや近未来をべースに過去の時代を絡ませたこの作品も、しっかりエンタメ的に作られてはいるが、描かれるのは世界の終末と絶望感で、それも厳しく容赦ない。救世主的な役割を押し付けられた伊東蒼が言う、こんな世界なくなればいい、は監督の本音? “湯婆婆”そっくりの夏木マリが貫禄あり。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
見始めてすぐに、どこに行くのこの話、あらまあ風呂敷広げよった、と思ったが結局面白かった。主人公を演じた伊東蒼が良いし、夏木マリ、北村一輝、毎熊克哉、高橋克典の芝居が作品を支えた。少女の自己不信が人間不信と世界滅亡につながるという厨二病ぽいファンタジーだがフィルターの向こうに貧困、いじめ(援交強制)などの酷薄な世界がある。それをエンデ『はてしない物語』、キング=ストラウブ『タリスマン』のようなクラシカルな並行世界往還譚で見せたのも良かった。
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