ベネシアフレニアの映画専門家レビュー一覧

ベネシアフレニア

美しい水の都ヴェネツィアを旅行で訪れた若者たちが、仮面の男から無差別に狙われるエクストリーム・ホラー・ムービー。監督は「気狂いピエロの決闘」(10)でヴェネツィア国際映画祭の監督賞・脚本賞を受賞したスペインの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア。「REC レック」シリーズのパブロ・ロッソが撮影を担当した。イタリアの“ジャーロ映画”へのオマージュを散りばめながらも、近年世界各国で社会問題化する「オーバーツーリズム」を背景に巻き起こる狂気の惨劇を、スタイリッシュな映像と巧みなストーリーテリングで見せる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    大型船舶が立てる荒波のせいでヴェネチアの水路の外壁の腐食が進む、という説は確かにある。住民が敏感なのも根拠はあるのだ。おまけにコロナ禍あり水害あり。観光地も大変。だが「沈みゆく街」という外観をこの映画は画面では見せていない。人工的にそのルックスを作るには予算が足りなかったのだろう。どこかハンパな印象。登場するスペイン人も狂騒的過ぎてこちらが引いてしまう。自業自得でしょ。クライマックス、廃墟となった劇場での惨劇が楽しいので壊滅的な星にはならなかったが。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    終盤のフックで吊られた死体などの残虐描写やヴェネチアの街並み、カーニバルの仮面をつけた排他主義者たちの仮装といった美術をはじめとする視覚的要素は、この映画を一見の価値があるところまで高めているが、特に若者たちが観光でハメを外す姿を描いてゆく導入部分は映画を本格的に楽しむまでの忍耐の時間のよう。この星取りでも最近取り上げたSNSを悪とする「デスNSインフルエンサー監禁事件」然り、作り手側の教訓が透けて見え過ぎてしまう瞬間があるのはどうなのだろう。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    あまりにもしょうもない動機にかられて殺人を繰り返す仮面道化師たちは滑稽ですらなく、12歳以上の観客の恐怖対象にはなりえないだろう。しかし、数々のジャーロ映画への愛に溢れた本気のオマージュはなんとも微笑ましく、ホラー・コメディとして、あるいは幻影のような水都ヴェネツィアのロケーションを隅から隅までとらえたツーリズム映画としてなかなか充実した時間を過ごすことができた。そして改めて手持ち撮影のスペイン映画には意外といけているものが多いことも付記したい。

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