自分革命映画闘争の映画専門家レビュー一覧

自分革命映画闘争

「パンク侍、切られて候」の石井岳龍監督による、2006年からの神戸芸術工科大学での映画創作研究活動の集大成かつ原点に戻った実験的冒険ドラマ。神戸芸工大映画コース教授の石井岳龍は、自分革命映画闘争ワークの実践に駆られ狂的状態に陥り、突如失踪する。石井岳龍教授を監督自ら演じるのみならず制作スタッフ全員がカメラの前に立ち、フィクションとドキュメントが混ざり合う中、映画を学び、作り上げていくプロセスそのものを描いていく。2023年3月18日より神戸・元町映画館にて先行公開。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「自分」「革命」「映画」「闘争」と、どこを切っても潔く宣言されているように、これは石井岳龍監督の信奉者でなければとても耐えられない、観念と抽象とナルシシズムと仄めかしと誇大妄想と自己憐憫の165分だ。もし本作に賛否両論が起こり得るとしても、それは信奉者、あるいは本作でカメラの前に立たされた彼の制作スタッフや、彼の生徒の中でのことでしかないだろう。その外側は最初から観客として想定さえされてなく、それこそが本作に込めたメッセージだと自分は受け止めた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    かなり仰々しいタイトルだが、アニメにミュージカル、特撮だけではなく、いきなりファシズムの連中まで登場する石井監督の妄想的で実験的なモキュメンタリーである。字幕によるひっきりなしの短い文言は、映画=映像という芸術マジックに対する監督なりの試行錯誤から生まれた言葉なのだろうか。そういえば久しぶりに「第七芸術としての映画」なる言葉も耳にした。ただスタッフ兼任だという出演者たちによる発言や歌が、やたらに長いのがしんどい。これも映画の多様性?

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    冒頭から自己言及による自閉を感じ、ちょっと乗れないかも、と警戒したが、次々と繰り出される石井岳龍の企み(アルタード・ステーツ・オブ・マインド、「箱男」etc.)は見るほうを落ち着かなくさせるあのおぼつかない若者たちを、数十分間のうちに観る甲斐のある存在に羽化させた。見事。邦画伝統の、助監督がエキストラの芝居をつけること、が、ヤングらが自前で闘うことに重なるラストに感銘を受ける。革命とは王殺し。石井は若者らに俺の屍を越えてゆけとまで説いている。

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