almost peopleの映画専門家レビュー一覧
almost people
感情に欠落のある4人きょうだいの日常を、横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄が各々1人分ずつ監督し、1本の映画に仕上げたドラマ。 “喜び”がない長男、“怒り”がない長女、“楽しさ”がわからない次男、“寂しさ”がない次女、それぞれの日常は。出演は「風のゆくえ」の嶺豪一、「餓鬼が笑う」の柳英里紗、「犬も食わねどチャーリーは笑う」の井之脇海、「望み」の白田迪巴耶。
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文筆家
和泉萌香
「そう言っておけばよし」として発せられる言葉に、恋人のために発する言葉、そして「言ったからには、その通りに」といった言葉……ある感情が分からない、という素直な兄弟4人を主人公に(皆、その自覚はなさそうだ)、今にも粉々になりそうな言葉の表面を我々に浴びさせ、触れさせ、その危うさ面白さを突きつける。りっぱな考えのはずなのに、借り物のような言葉のやりとりが次々に流れ込んでくるのを受け止めるのには、体力がいるものだ。長女、火水子がこぼす一言が象徴的。
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フランス文学者
谷昌親
個々のエピソードはそれぞれの監督の個性を浮き彫りにしていて見ごたえがあるし、菊池成孔の音楽がエピソードごとに変幻自在ぶりを披露するのも楽しい。しかし、4つのエピソードを兄弟姉妹の物語とする必要があったのかどうか疑問だ。4人それぞれになんらかの感情が欠けているという以外に全体を貫くものは特にない。長女のエピソードなどは、石井岳龍監督ならではの型破りな展開となるのだから、タイトルそのままにalmost peopleの物語としてまとめたほうがよかったのではないか。
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映画評論家
吉田広明
それぞれに何らかの感情を欠いた四人兄弟姉妹という設定がそもそも抽象的なので、リアルに寄せる三篇が嘘くさく見える。その抽象性を逆手にとって寓話にした石井篇が唯一関心の持てる一篇だった。リアル傾向の三篇を肯定的に捉えようと思っても、感情がないとどうなのかを探ろうとする一種の実験だとするなら何らの展開も帰結もなく物足りないし、現代はみんな何かしら欠如を抱えているということの比喩であるとしたら当たり前すぎて胡乱。何にせよ本作の意義が見えない。
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