愛のこむらがえりの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
面白くない原作でもないよりはマシ。脚本を読めるスポンサーもプロデューサーもいない。ポスター映えするキャストが必須。と劇中語られる、原作と役者至上主義の邦画界でオリジナル脚本を映画化すべく奮闘する愛妻未満物語。ならば、名のある役者を口説いて作るのではなく、低予算でも名のない人達だけで作れば良かったのではないか。これじゃ結局、批判しながら、現状追認をしてるだけ。「渇水」と同じ人が撮ったかと思うと絶望が深い。本気で変えようよ、日本映画。もちろん社会も。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
長年助監督でくすぶる男がパートナーの励ましと助けを得てもう一度、自分の夢に挑む。昨今の映画業界にありがちな生々しい話がてんこ盛りの加藤正人と安倍照雄のオリジナル脚本が面白い。加えて主演の磯山さやかと吉橋航也がとてもいい。下手すれば紋切り型の尽くす女になってしまいそうなヒロインを、磯山がおおらかさの中にちょっと人生に疲れた感じも滲ませて見事に演じている。吉橋の茫洋としていて世間知らずの映画オタクぶりも絶品。「渇水」に続いて髙橋正弥の演出が光る。
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映画評論家
服部香穂里
“原作至上主義”など業界の現在を毒気たっぷりのユーモアを利かせて皮肉りつつ、映画に魅入られてしまった人びとの執念や怨念さえも入り交じる実感の込められた台詞の数々が、同類ゆえかズキズキ突き刺さる。怪しすぎるホヤ好き男や不法投棄のくだりは、劇中で指南される脚本講座と照らし合わせても必要性をあまり感じないが、悲壮感なく健康的な磯山さやかと、絶妙に華に欠ける吉橋航也の貧乏カップルの、苛立たせつつも応援心をくすぐる奇特な魅力が、作品を清々しく牽引する。
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